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民医連新聞

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診察室から 大人の本気が問われる 「いじめ」問題

 不登校の相談を続けていると、時に直面するのが「いじめ」の問題です。いじめ被害の経験が、その後の精神疾患の発症リスクを高めるとの報告もあります。事実、実際にいじめ被害を経験した子どもに会うと、しばしば深刻なトラウマとなっていることを実感します。
 保健予防的観点からも、いじめも他の疾患と同じように、予防と早期発見・早期対応が重要だと考えます。が、なかなか一筋縄でいかないのが困りものです。いじめは、一定の閉鎖されたコミュニティーのなかではどの集団でも起こり得る上、見えにくい状況で発生し、本人も声をあげにくいという特徴があります。いじめられている側も、「自分にも悪いところがあるのではないか」「(いじめられていることを)知られるのが恥ずかしい」と感じる心理もあるようで、家族にすら隠そうとします。このため、そもそも発見が難しい。さらに、経過のなかでいじめのターゲットが変化して、被害者と加害者の関係が入れ替わることもあり、様相も実に複雑です。
 いじめが判明した時や疑った時に私が心がけていることは、直ちに本気で動くことです。というのも、被害者の心中には「相談してもどうせ変わらない」という諦めが、加害者には「どうせ大したことにはならない」という不遜が根を張っており、その二つはどちらも「大人が信頼を失っている」点で共通しています。子どもたちは大人の怠慢を鋭く見抜きます。一度信頼を失うと、子どもは心を閉ざし、二度と胸の内を話してくれなくなってしまいます。ですので、絶対に気を抜くことはできません。かならず被害者本人の安全を守り、学校、カウンセラーなどにも協力をお願いし、事実の把握と解決に向け働きかけています。
 最後に私の持論ですが、いじめ問題の教育は道徳ではなく、社会科で扱うべきだと考えています。一人ひとりに解決を委ねるのではなく、人間社会の課題として、予防や解決のプロセスを学ぶことが大切ではないでしょうか。(齋藤耕一郎、群馬・前橋協立病院)

(民医連新聞 第1793号 2023年10月16日)

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