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民医連新聞

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ケアに希望ある未来を(2) 保育は現場をささえ未来をつくる

 多職種の処遇改善をテーマに伝える「ケアに希望ある未来を」。シリーズ第2回は、院内保育所などで職員や地域の子どもささえる保育士です。(稲原真一記者)

制度からこぼれた現場

 保育士の給与は徐々に改善してきていますが、現在でも月収では全産業平均より約4万円低くなっています。保育士の処遇改善は、2015年から「処遇改善加算」の形で国が主導してきました。しかし、制度を利用できるのは認可保育所のみ。民医連など医療機関が運営する院内保育所の多くは無認可のため、ほとんどは制度の恩恵を受けられません。
 元々低すぎる保育士の処遇について、岐阜・わらべ保育所の日比野美津代さん(保育士)は「介護などと同様、保育も女性の仕事で、誰でもできると専門性を軽視されてきたのでは」と指摘します。特に院内保育所は行政からも「職員確保のための福利厚生」と見なされ、運営費はほぼ事業所の持ち出し。さまざまな制度の対象からも外され、地域の保育所との処遇に差が生まれて、職員確保や十分な保育を提供することが難しくなっています(図1)。

認可で処遇改善も

 一方で、院内保育所でも、認可を受けた事業所では処遇改善がすすんでいます。広島・ひまわり保育園の長谷川清美さん(保育士)は「子ども一人ひとりに公定価格が支払われ、こんなに変わるのかと驚いた」と言います。処遇改善加算の経験年数や研修などの条件が質の向上にもつながり、職員の確保や経営の収支構造の改善で、子どもにとってもより良い保育が実践できるようになりました。
 しかし、処遇改善加算は自治体の負担にもなるため、待機児童の減少などを口実に、条件を満たしても認可が下りないケースが増えています。認可を受けた熊本・菊陽ぽっぽ保育園の川上隆子さん(保育士)は「経営幹部の積極的なかかわりがカギだった」と、法人や県連の課題としてとりくむ必要性を訴えます。

ケアする人のケア

 民医連の保育所は、これまでも職員とその家族を守る保育を綱領の立場で実践してきました。「地域の認可保育園で毎日泣いていた子どもの相談を受け、院内保育所で受け入れた途端に元気になるケースも珍しくない」と話すのは、東京・おひさま保育園の村越ルミさん(保育士)です。
 院内保育所は、24時間いのちと向き合う現場職員が、子育てをしながら安心して働くためにあります。村越さんは「子育て世代の医師や看護師は、過酷な労働環境に多くの悩みを抱えている。上司や同僚にも共有できない悩みを保育士が聞くこともある。ケアを実践する職員のケアを担い、職員が働き続けられる職場に貢献している」と強調します。
 職員を守る現場の努力も人手不足でギリギリ。国民の健康を守る職員の子どもの権利も、本来は国が保障すべきです。しかし地域に休日や夜間の保育体制はなく、穴を埋めるのが院内保育所ですが、国はそれを放置し続けています(図2)。今年6月19日、全日本民医連保育世話人会は、院内保育所の処遇改善を求め、こども家庭庁と懇談を行いました。そこでもくり返されたのは「院内保育所は福利厚生」「認可になればいい」という言葉。長谷川さんは「こども家庭庁の『全ての子どもに切れ目ない保育を』の理念はどこにあるのか」と憤ります。

子育て世代をつなぐ

 村越さんは「すべての子どもが十分な保育を保障され育つ社会は、民医連のめざす未来に希望を持てる社会にもつながる」と言います。また日比野さんは「高齢化がすすむなかで、地域の子育て世代をつなぐ窓口も保育の現場」と訴えます。
 次世代を担う職員が安心して働き続けられ、地域のなかで世代をつなぐ場にもなる保育所。長谷川さんは「民医連の未来にもつながる活動として、多くの職員と手を結んでこの運動をすすめたい」と期待します。

(民医連新聞 第1792号 2023年10月2日)