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民医連新聞

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相談室日誌 連載549 生活保護費は何のためのお金 基準以下の生活を送る利用者(兵庫)

 Aさんは、80代で一人暮らし、生活保護を利用しています。自宅で動けなくなり、当院に入院しました。退院が決まり生活保護課のケースワーカーへ移送費の支給を相談したところ「移送費は支給できない」と回答が。安心サポートセンター(社会福祉協議会が行う金銭管理の支援事業)が金銭管理を支援し、数十万円のお金が貯まっていたそうです。「もともと“生活費”として支給されたお金なので、移送費が支給されないのはおかしい」と抗議しましたが、生活保護課の決定は覆りませんでした。
 Aさんは、生活保護や介護サービス、安心サポートセンターなど、複数の制度・サービスを利用。兄弟は他界し、身寄りのない状況です。長年、当法人の診療所にかかり、身近な人は診療所や介護サービスのスタッフ、生活保護のケースワーカーです。視力・認知機能の低下があり、成年後見制度の利用を検討しています。
 憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定しています。生活保護が“最低限の生活を営むのに必要なお金を支給している”ことを考えると、お金が貯まるのは“生活保護以下の生活をしている”と言えます。Aさん自身が生活に満足していたかはわかりませんが、医療や介護サービスが入り、医食住は成り立っていたと思います。しかし、認知機能が低下していたAさんの“生活の質を上げる”ことは考えられていたのか? それはだれの役割だったのか? もう少しおいしい物を食べたり、新しい服を買ったり、貯まるお金を他の何かに使ったりすることができたのではないか? ケースワーカーや安心サポートセンターはお金を把握しているのに、“生活の質の向上”という視点でAさんの生活をみていたのだろうか? と疑問を覚えます。
 他にも似たようなケースがあると聞き、国や自治体が“他者が管理すればお金が余るので、保護基準を下げてもいい”という考えに至らないかとゾッとしました。安心サポートセンターやケースワーカーには、生活の質の向上という視点でかかわってほしいと思います。また、自分たちも含め、健康で文化的な生活を送ることを支援する視点が求められていると考えます。

(民医連新聞 第1792号 2023年10月2日)