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民医連新聞

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副作用モニター情報〈603〉 ST合剤による高カリウム、低ナトリウム血症、 汎血球減少(血球成分の減少)

 ST合剤は、抗菌物質スルファメトキサゾールとトリメトプリムとを配合した合成抗菌剤です。この2成分は、細菌の葉酸代謝経路の連続した2カ所をそれぞれ阻害する結果、単独使用に比べ、相乗的な抗菌作用の増大が認められます。発売当初は一般感染に使用されていましたが、現在は制限された形で、免疫が抑制された患者のニューモシスチス肺炎の治療と予防の第一選択薬として、使用されています。
 他の薬剤が無効の場合、あるいは他の薬剤が使用不能の場合に使用という制限がついていますが、この制限がついている理由としては、基本的な抗菌作用が弱いこと、過去に耐性菌が問題となったこと、ニューモシスチス肺炎の高用量の治療で重篤な副作用が起こる可能性があること、があげられます。
 今回、自己免疫疾患であるANCA関連血管炎に使用して重篤な副作用が発生したので、報告します。

症例)80代女性

 併用薬にスピロノラクトンあり。
 時々発熱あり。培養検査でMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)と大腸菌を検出。ST合剤のバクトラミン錠®4錠1日2回で服用開始となる。
 内服8日目から食欲低下、内服12)日目に食事はほぼゼロとなる。
内服13日目:肝機能低下傾向、ナトリウム(Na)121mmol/L、カリウム(K)5.4mmol/L
内服20日目:白血球6570→900/μL、ヘモグロビン(Hb)11.2→8.9g/dl、血小板19万→10万/μL、Na109mmol/L、K4.6mmol/L、内服すべて中止となる
中止4日目:さらに低下、白血球200/
μL、Hb7.8g/dl、血小板6.3万/μL、Na
116mmol/L、K4.9mmol/L

* * *

 スピロノラクトンを併用していたため、K値が上昇しやすかったこと、ANCAが好中球を標的とする異常な抗体であり、好中球が正常に機能しなかったことで、重篤な副作用となりました。
 ST合剤はニューモシスチス肺炎のリスクを有する患者を対象とする旨の注意喚起も出ています。必要な患者にとって大切な薬剤であり、症例を絞り、電解質のチェックをこまめに行い、副作用のモニタリングを行いながら、投与量と投与間隔を見直すことが重要と考えます。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1791号 2023年9月18日)

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