私がここにいるワケ 一人ひとりちがう点をつなぎ尊厳ある生活をささえる 奈良・岡谷会ホームヘルプステーション 訪問介護員 橋爪 さわさん
民医連で働く多職種のみなさんに、その思いを聞くシリーズ8回目は、訪問介護員(ホームヘルパー)。奈良・岡谷会ホームヘルプステーションの橋爪さわさんです。(丸山いぶき記者)
利用者女性「ホント助かります。買い物が一番助かる。スーパーは遠くて買いに行けないから。片付けもごはんの支度も、年を取ると思うようにいかなくて、嫌ですね」
橋爪さん「大変ですよね。でもよくやってはる。今特に暑いしね。水分と塩分も取ってくださいね」
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声に応えながら、利用者Aさん夫婦の2階建て3LDKの一軒家を、手際よく掃除していく橋爪さん。この日は90代の夫の生活援助2の支援で、サービス提供時間は45分。普段は買い物を中心に、残りの時間で掃除しますが、妻といっしょに冷蔵庫を確認し、買い物は「大丈夫」。風呂や洗面所、トイレの掃除、居室の掃除機やフローリングワイパーがけを、次々とこなしていきます。「限られた時間内で、どこを優先するか。本人と家族、ケアマネジャーと相談して、支援内容や時間は決まっているものの、手順や重点にはヘルパーの個性も表れる」と橋爪さん。その日の様子をいち早く共有するため、ICT(情報通信技術)も活用しています。
ヘルパーの働き方
岡谷会ホームヘルプステーションでは現在、登録型42人、勤務時間を定めた非常勤2人、支援中心の常勤2人、常勤の主任12人、計58人(うち男性1人)のヘルパーが働いています。橋爪さんは常勤の主任ヘルパー(サービス提供責任者)で統括所長。主任ヘルパーは、ケアプランにもとづき訪問介護計画を立て、その内容を支援に入るヘルパーに引き継ぎ、指導・管理する責任者です。
登録型ヘルパーは、直行直帰で支援に入ります。給与は支援時間単位の時給と移動手当で、扶養の範囲内に収入を抑えたい人から、空き時間を活用したい人、社会保険に加入して働きたい人まで、さまざま(図)。コロナ禍では毎月の全体研修や事業所への顔出しも制限せざるを得ず、特に大きな孤独と不安を抱えることになったのも、登録型ヘルパーでした。
深刻な人材不足
「いちばんの課題は人材不足。特に登録型は減る一方」。登録型の定年は75歳で、次々とベテランヘルパーが定年を迎えていますが、入職は年1人あるかないか。「以前は、子どもの手が離れた女性が家計補助的に働き始めることが多かったが、今は安定収入を求める人が増えた」と指摘します。
橋爪さんも、介護保険制度開始の翌年、30代後半から他の仕事と兼業で登録型として働き始め、その後主任ヘルパーに。ヘルパー歴は22年。利用者宅へは主に自転車やバイク移動で、「夏や雨の日は本当に大変。利用者と1対1のしんどさと、反面、良さもある。続けているのは、この仕事が嫌いじゃないから」と笑います。
かけがえのない専門性
ヘルパーはほとんどが中途採用で、「民医連」を実感する機会は多くありません。ただ、橋爪さんは奈良民医連の企画や研修に参加すると、やりがいにあらためて気づかされるといいます。
「他人を生活の場に入れるって、大変なことですよね」。利用者を不安にさせないように余裕を持ち、相手の気持ちの動きを感じとることが求められます。「利用者もヘルパーもみんなちがう。利用者一人ひとりや家族が大事にしていることをつかみ、他のヘルパーの良いところを学ぶ。私たちの仕事は点。一つひとつの点をつなぎ、利用者の生活をささえることが目的。不可欠な専門職として、社会にもひろく魅力を知ってもらいたい」と話します。
(民医連新聞 第1791号 2023年9月18日)
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