相談室日誌 連載548 外国籍患者の生活に希望を 私たちが声をあげていく時(愛知)
当院は、名古屋市にある無料低額診療事業を実施している病院です。
外国籍のAさんは30年前に観光ビザで来日し、日本人と結婚しましたが、在留資格の手続きをせず、その後離婚。いったん母国へ帰国後に、再来日し、在留期限切れの状態で、友人や妹の支援を受けて、生活していました。
今年の2月、他院で肺がん疑いの診断を受けますが、その病院では治療ができず、NPOを通じ、治療をしてくれる病院を探していました。県内の病院へ相談しますが、無保険、在留資格がないとの理由から治療を引き受ける病院が決まらず、隣県の当院へ相談が入りました。
当院で受診後、精査目的で入院。検査の結果、肺がん診断で早期に治療が必要と判断。しかし当院では外科治療が行えず、転院先を探しましたが、見つからない状況が続きました。Aさんの入院期間中に入管法の改定があり、テレビ局や新聞社が当院の無料低額診療事業の取材で訪れ、Aさんが取材を受けました。取材当日も家族が入管に出向き、診断書を提出。特別在留資格の相談を行い、その時の様子も報道されています。報道の影響かは定かではありませんが、取材を受けた数日後、入管から在留許可が出たとの知らせがあり、Aさんは在留カードと国民健康保険証を取得することができました。
Aさんは当院退院後、急性期病院に入院し、無事手術を受けることができました。報道を見た人から激励の言葉や基金の支援の声もひろまり、世間の関心の高さがうかがえました。
当院に受診する人は仮放免中の人が多く、そのなかには難民申請をしていても何年も認定が出ない人もいます。仮放免中は就労もできず、健康保険にも入ることができないため、ボランティアや母国の支援を得ながら、それでも日本で生活していきたいと、希望を持って過ごしている人も多くいます。
今回の入管法改定で、今まで以上に日本で生活していくことが困難になる状況が予測されます。みんなが暮らしやすい環境をつくるために、一人ひとりが声をあげていくことが大切であると感じました。
(民医連新聞 第1791号 2023年9月18日)