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民医連新聞

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平和への思いを力に若手とともに育ち合う 栃木・宇都宮協立診療所

 栃木・宇都宮協立診療所では元奨学生の看護師を中心に、昨年からPiece of Peace(PoPチーム)という新たな平和活動がスタートしました。いきいきと育つ若手職員の活動と、寄り添う現場を取材しました。(稲原真一記者)

 夕方の診療所の休憩室に楽しげな笑い声が響きます。この日は月2回のPoPチームの活動日。資料を配った事務次長の田中真史さんが議題を確認します。議題は田中さんとメンバーの大森萌さん(看護師)の実家の栗を販売する財政活動と、地元小学校での平和学習の講義内容の相談。メンバーの内藤愛子さん(看護師)と古谷万由輝(まゆき)さん(看護師)も加わり、時に真剣に、時に脱線しながら、笑顔の絶えない議論が続きます。

なんでも話せる居場所

 チーム結成のきっかけは、昨年の原水爆禁止世界大会。新入職員として初参加した内藤さんと大森さんに、田中さんが声をかけたことが始まりです。田中さんは「以前は参加者が報告したらそこで終わりで、継続した活動の必要性を感じていた」とふり返ります。この提案を「ありがたかった」と話す内藤さんと大森さん。奨学生活動で学んだ社会や政治の問題を働きながらも学び続けられること、居場所をつくろうとしてくれたことがうれしかったと明かします。
 昨年は休止していた財政活動を再開し、参加者対抗のクイズ形式で世界大会の報告会も開催。民医連の活動と平和や政治の関係を学ぼうと、『綱領と歴史のブックレット』の学習を始めました。「難しい内容だったが、自分たちの活動につなげて考える学習をすすめた」と田中さん。今年入職した古谷さんが合流し、それまでの学習内容を共有することで徐々に形になり、「自分たちのわかる言葉で伝えることを意識した」という内容で発表()。職員からは「綱領と私たちの実践のつながりがよくわかった」と好評で、さまざまな事業所でも発表しました。

図 平和や綱領を土台にした民医連活動の図。イラストは古谷さん作。

メイドイン栃木の挑戦

 実は内藤さんと大森さんは、十数年ぶりに自県連で看護師人生をスタートさせた元奨学生。栃木民医連の加盟事業所には病院がなく、以前は隣接県での研修が基本でした。「職員体制が整い、診療所でも育てられると思った」と語るのは看護部長の前田弘子さん。手探りでのスタートでしたが「技術は時間が解決する。1年目は社会人、看護師として大切な心構えを学ぶ期間」と、医師や事務などもかかわって職場全体で寄り添い、育てる意識を共有しました。
 教育担当の宮崎由美さん(看護師)は「迷いながらかかわってきたが、一人ひとりが一生懸命応えてくれた」と話します。「個人に合わせた教育を模索することで、プライマリケア(総合診療)の視点も身につき、診療所の研修で次世代を担う息の長い看護師の育つ可能性が見えた」と手応えを感じます。
 PoPチームの3人は、高校生医療体験で同診療所の看護師に憧れて奨学生に。すでに看護師をやめた同級生も少なくないなか、「目標になる先輩とやりたい看護を実践できているから、楽しく働けている」と口をそろえます。

職員、地域、世代をつなぐ

 活動について尋ねると、チーム全員から即座に「楽しい!」という言葉が返ってきました。社会や政治を学ぶことで、戦争や社会保障の問題などを自分事として考えられること、メンバーと真剣に議論するなかで新しい価値観に気づけること、そしてそれを看護の視点にも生かせていると実感しています。今後は別の事業所にも活動をひろげ、仲間を増やしたいと計画中。さらに「地域でも活動をひろげ、多くの人に知られる活動にしたい」と目標をかかげます。
 前田さんは、「職員は宝です。平和活動や社保活動は栃木の弱かったところで、PoPチームが運動を引っ張ってくれている。次の世代につないでいくためにも、職員のやりたいことをダメと言わない職場が大切」と、今後の活躍にも期待します。

(民医連新聞 第1791号 2023年9月18日)