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民医連新聞

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いのちとケア 優先の社会を 第45期第3回評議員会を開催

 8月20日、全日本民医連は東京都内で45期第3回評議員会を開きました。評議員83人(予備評議員含む)と四役・理事、会計監査、傍聴者あわせて175人が参加。第46回総会(来年2月に開催)までの半年間の方針を討議し、決定しました。(多田重正記者)

 開会あいさつは平田理副会長。山梨勤医協の倒産・再建の教訓にふれ、共同組織とともに、運動課題と一体に医師問題、経営問題を克服する重要性を強調しました。
 増田剛会長はあいさつで、コロナ禍に対応してきた2期4年の実践から教訓を整理すること、コロナ後の出口戦略としてのリポジショニングの必要性を指摘。「私たちの運動は戦争を止め、いのちとケア優先の時代を切り開くたたかい」(第2章)だとのべ、「悪政に風穴を空けよう」と力を込めました。
 韓国の人道主義実践医師協議会のウ・ソクギュンさんも駆けつけ、「軍事的危機が高まるなかで、民衆の連帯が重要」とあいさつ。
 前日の70周年記念式典・レセプションに参加した藤末衛前会長も、50、60、70周年の式典・レセプションをふり返り「70周年は、2010年の綱領改定の真髄である平和と健康保障の具体的実践が評価されたのでは」とあいさつしました。
 理事会報告は、岸本啓介事務局長。戦争する国づくりが実行段階に入るなど、いのちと人権を軽視する211国会の異常性を指摘しました。憲法を守り抜くことが45期最大の課題であり、「総選挙で、改憲勢力を3分の2未満に追い込もう」と訴えました。また国民に困窮がひろがるなか「一職場一アウトリーチ」など、共同組織とともに受療権を守り抜こうと呼びかけました。
 絶対的医師不足解消の課題では、学習とともに運動をすすめる決意や「ジェンダー的視点を強く取り入れた医師増員運動が必要」などの意見が全国から寄せられていると紹介。経営問題では、全国的に「容易ならざる経営状況」にあり、「たたかいを最優先に」と訴えました。

■全体討論

 全体討論では、56本の発言(文書発言含む)がありました。
 栃木・関口真紀評議員は、無料低額診療事業の適用検討や気になる患者のほか、地域包括支援センターや共同組織などから持ち込まれた相談に対応する「生活相談チーム」の実践を紹介。地域でもSDHの学習会を行うなど、ネットワークづくりをすすめ、民医連外からも相談が寄せられています。
 福島・北條徹評議員は、東京電力福島第一原発のALPS処理水の海洋放出について発言。海洋放出中止を求めた「ふくしま復興共同センター」の申し入れ(8月9日)に、経済産業省はオンラインで対応。名前も所属も非公表で顔も出さず、黒い画面から従来通りの回答をくり返すだけで、「これが政府の言うていねいな説明か」と憤りました。
 京都・小泉智香子評議員は、県連理事会のもとにジェンダー委員会を発足。職員を対象に「性的マイノリティーに関する意識調査」を実施したことや「誰もが利用しやすい事業所づくり」の提言作成にとりくんでいる、と報告しました。
 北海道・小市健一評議員は、加盟事業所の精神科医が逮捕された事件に際し、精神科医・心理職の支援を受けながら、職員のメンタル面のケアを行い、事業を継続していることを報告。共同組織拡大強化月間を前に友の会と議論し、「困難がひろがっているいまこそ、地域に出る必要がある」と一致したことも紹介しました。

◇       ◇

 討議の後、次期理事会選考基本方針、会費基準改定案(第46回総会で採択予定)、2023年度上半期決算・会計監査報告を全会一致で採択。根岸京田副会長が閉会あいさつを行いました。

あらたな戦前を許すな

 宮城・宮沼弘明評議員は、坂総合病院付属北部診療所の憲法九条の碑建立について報告。改憲反対署名400筆以上を集めるも、手詰まり感が漂うなか、京都・まいづる協立診療所の九条の碑に触発され、募金目標100万円、除幕式は10月21日と設定し、とりくみを始めました。職員や患者、共同組織、地域開業医5人などから、総額114万8000円(8月12日現在)の募金が。多額募金者は石碑の裏に名前を刻むことにしましたが、刻みきれないほどに。
 沖縄・座波政美評議員は、沖縄で新たな戦前が始まっている、と発言。安保3文書が閣議決定され、沖縄では大軍拡が露骨にすすめられています。自衛隊は「北朝鮮対応」でPAC3ミサイルを沖縄本島はじめ石垣島、与那国島など4島に配備。港湾労働者が「朝起きると目の前にミサイルがあった」と語るなど、戦争の準備が日常に。台湾有事をあおり、日米一体と臨戦体制がすすんでいることを実感していると座波さん。二度と沖縄を戦場にしない「ノーモア沖縄戦」の運動や、沖縄を経済や国連の拠点にするとりくみのひろがりも語りました。
 長崎・平野友久評議員は、開校3年目の県連平和学校について発言。戦後78年、被爆者の平均年齢は85歳を超え、「継承こそがキーワード」と言います。今、戦争のリアルを知ること、知らせることが大切で、2021年に始めた平和学校では、松谷訴訟で被爆と長崎民医連のかかわりを学習しました。その卒業生が碑めぐりガイドを行い、今年の世界大会でも活躍。医療・介護従事者がなぜ戦争に反対するのかを深めています。
 平野さんは「まいた種は育ちはじめている。平和学校に続き、社保学校にもつなげ、職員育成をすすめたい」と決意をのべました。

看護・介護の制度改善を

 愛媛・末光一元評議員は、ナースアクションについて報告。全日本民医連の提起を受け、4月に県連看護委員会で検討し、県看護協会主催の看護就活ナビに参加していた50施設と県看護協会に、「看護職員の処遇改善を求める請願署名」とお願い文書を、返信用封筒(着払い)とともに送付しました。すると、5月中~下旬にかけ、2公立病院はじめ6施設・団体から計500筆超の署名が。今後、病院訪問や看護協会などの研修会で“声を届ける”活動、外来待合室での患者へのお願いなどに奮闘する予定です。
 大阪・星野渉評議員は介護ウエーブについて。昨年度開いた介護ウエーブ学習交流会には、全法人から200人超が参加。「介護請願署名」は県連目標1万筆に対し、1万3263筆(5月10日現在)。5月11日は職員約300人が参加し、3年ぶりの街頭宣伝を行いました。5月22日の介護国会請願行動にも、ケアマネや介護職員など8人が参加。星野さんは「現場から地域に運動をひろげていけるよう、継続的に行動したい」とのべました。

いのちを守るために

 京都・中川洋寿評議員は、「放置し留め置かれたのは患者だけでなく、社会保障と医療体制」だと、コロナ禍を考える集会について発言。集会は6月、課題を明らかにし、京都府に要請する企画として、多団体からなる実行委員会で「コロナ放置死を考える」をテーマに開きました。人手不足のなかで患者訪問を続けた保健所の実態、民医連のコロナ病床の状況、コロナ前から医師・看護師不足のままの国の政策の転換などの訴えが。障害者施設からは「医療にかかることが今後も困難になるのではと心配」など、多分野からのリアルな発言がありました。
 滋賀・東昌子評議員は、気候変動対策について発言。世界各地での猛暑や、ハワイ・マウイ島での大規模火災に触れ、「気候危機は深刻な形で進行している」と訴えました。また、東さんは、日本が世界で5番目の温室効果ガス排出国で、医療分野は排出量の多い産業だと指摘しました。
 滋賀では、佐々木隆史さん(医師、医療生協こうせい駅前診療所)が中心となり、昨年5月に「みどりのドクターズ」を立ち上げ、今年8月に社団法人化。学会でのセミナーや医学生向け学習会を開いています。東さんは、県連もこの活動に合流する決意をのべ、全国に気候変動に関する署名への協力を呼びかけました。
 愛知・小南重人評議員は、外国人に対する無料低額診療事業(以下、無低診)のとりくみを発言。名南病院は無低診利用者の40%以上が外国人で、多くは在留資格のない仮放免者。糖尿病などの内科疾患の患者が多数だと言います。
 今年5月、入管法改悪への反対世論が高まるなか、医療現場からも実態を伝えようとスタンディングデモを行い、SNSで発信。多くのメディアに取り上げられ、支援や寄付につながりました。一方で病院の費用負担は大きく、行政の支援なども求めて運動を続けていくことが必要と訴えました。
 大阪・穴井勉評議員は、大阪民医連のPFAS汚染問題のとりくみを発言。日本各地でPFAS汚染が問題になっており、大阪でも市民団体などと共同して運動団体を立ち上げ、とりくもうとしていることを報告しました。
 京都・社会健康医学福祉研究所の小泉昭夫さん(医師)を講師に学習会を行い、世界や日本での動き、ダイキンによる大阪の汚染状況などを学習。すでに住民調査を行っている東京の運動にも学びながら、職員と共同組織に問題を知らせ、大阪でも運動を大きくしていきたい、と決意を語りました。

絶対的医師不足解消を

 北海道・黒川聰則(としのり)評議員は、釧路市における絶対的医師不足の現状を報告。精神科では、大学の医師引き上げで、日赤病院の外来が週2回に縮小しました。その後、精神科クリニックの院長が急死し、労災病院は医師の退職で科を閉鎖、別の心療内科クリニックも院長の体調不良で閉院するなどの事態が続いています。
 黒川さんは、医師不足は他の科でも深刻で「絶対的医師不足と相対的遍在、地域医療崩壊の危機感はこの地域で必死に奮闘している医師に共通する問題意識」と語り、地域医療を守る共同をひろげる決意を語りました。
 青森・田代実評議員は「真の働き方改革」のために、絶対的医師不足解消を掲げた方針を歓迎する女性医師の声を紹介。この医師は、子育てのため「医師はあきらめた」感覚になり、当直や入院患者の受け持ちができないのは「力不足」と感じていたが、「ケアを顧みない政治」を批判する岡野八代さん(同志社大学教授)の考えなどにふれて変化。「ドクターズデモンストレーションには、青年医師だけでなく、家庭でのケアを担いつつ、医療実践に参加している多くの女性医師の声を反映させてほしい」との声を報告しました。
 広島・佐々木敏哉評議員は、県連にジェンダー委員会を設置し、理事会の女性比率の向上や会議の時間内開催など、組織変革のとりくみを報告。自身の子育ての経験を交え「女性が安心して思いを出せるしくみづくり」や、「ケアのために条件がないように見える人をはじめ、多様な人が全日本や県連の役員になれる組織に変革していく」必要性を訴えました。

経営難を乗り越えよう

 埼玉・内村幸一評議員は、電気料金、医療材料、消耗品、委託料などの値上げや、消費税増税の影響を受け、費用が増加している法人・事業所の現状を報告。「地域の期待に応え、求められる役割を見極めながら、小手先でない収支構造の転換が必要」とのべ、全職員の力で経営を改善する決意を語りました。
 山梨・清水季世子評議員は、新型コロナウイルス感染症と、光熱費高騰の影響に関する介護事業所向けのアンケート調査について報告。山梨民医連として、県内411の介護事業所にアンケートへの協力を依頼し、124事業所から回答が。通所系で5割、入所系で7割がクラスターを経験し、物価高騰で「経営努力の範囲を超えている、これは災害レベルだ」との切実な声も寄せられました。
 結果をもとに県連として記者会見。さらに県老人施設協議会や社会福祉法人経営者協議会などと懇談し、県にも要請しました。知事は6月、医療・介護・福祉施設の物価高騰や、社会福祉施設の賃上げを補助すると発表。「運動をすすめれば情勢は動く」と、職員の確信になっています。
 千葉・伊藤美砂子予備評議員は、隔年だった薬価改定が毎年の改定になった結果、医薬品製造会社が経費削減のあまり、法令などを守らない事例が横行し、適正製造基準違反で製造停止となる製薬企業が出ていることや、新型コロナウイルスの世界的流行などで、必要な薬剤が患者に提供できない状況が生まれていると告発。結果、医薬品の調達業務に割かれる時間が人件費を押し上げ、コロナ禍による患者減などもあり、薬局経営が悪化していると報告しました。伊藤さんは、薬剤師として、本来のあるべき地域医療や、国民の健康増進の姿を明確にする運動に参加していく決意をのべました。

(民医連新聞 第1790号 2023年9月4日)