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民医連新聞

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副作用モニター情報〈602〉 ランソプラゾールによる舌炎

 今回は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)ランソプラゾールの副作用について紹介します。

症例)70代男性。逆流性食道炎のため、6年以上ランソプラゾールを服用中の患者。舌全体の痛みがあるとのことで口腔(こうくう)外科を受診。舌がんは否定され、舌炎の診断。原因はわからず。
 ステロイド口腔用軟膏とうがい薬で経過観察していたが、症状の改善はなし。
 薬剤師の提案で、PPI長期投与によるハンター舌炎の可能性を疑い、メコバラミン錠が処方追加される。3カ月後、舌全体だった痛みが舌先だけの痛みに軽減した。

* * *

 ハンター舌炎とは、ビタミンB12の欠乏に起因する舌の炎症で、舌の痛みや、ヒリヒリ感、灼熱(しゃくねつ)感が生じます。また、味覚障害や舌の乾燥などの症状がみられることもあります。
 今回の舌炎にかかわるビタミンB12の低下ですが、そのビタミンB12が欠乏する原因の一つに、PPIの長期服用があげられます。
 胃酸の分泌を抑えるPPIの長期服用による胃酸の低下が、ビタミンB12の吸収障害を起こすといわれています。米国の研究では、ビタミンB12欠乏症の診断を受けた約2万6000例と、その対照群約18万例について行った症例対照試験の結果、2年以上PPIの処方を受けていた人は、ビタミンB12欠乏症リスクの増大が認められています。オッズ比は、PPI群が1.65(95%信頼区間:1.58~1.73)でした。
 また、用量についてはPPIを高用量で服用しているほどリスクが高かったというデータもあります。
 検査などでビタミンB12の数値を測定することはまれかもしれませんが、PPIを服用している患者で原因のはっきりしない口腔内症状がある場合は、このビタミンB12欠乏を疑ってみることは必要なのかもしれません。薬を止めると徐々に影響は弱くなることがわかっており、また用量を低くすることで発生リスクを下げることもできます。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1790号 2023年9月4日)

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