新連載 こんなにヤバイ!! 日本の食料事情 (1)食料自給率38%は砂上の楼閣 農民運動全国連合会 勝又真史
人が生きていく上でもっとも大切な“食”。日本の食がいま大きな危機に直面しています。
街を歩いていると、コンビニやファミリーレストラン、ファストフード店をはじめ、スーパーや百貨店の店頭、食品棚などに食料品があふれにあふれているように見えます。しかし、それは見た目だけであって、その実態をみると、日本の食料事情は極めてぜい弱なことがわかります。
日本の食料自給率はカロリーベースで38%(図)。カロリーベースの食料自給率は、基礎的な栄養価であるエネルギー(カロリー)に着目して、国民に供給される熱量(総供給熱量)に対する国内生産の割合を示す指標です。こうしてみると、カロリーの6割近くは海外からの輸入で賄われています。日本人の胃袋の半分以上を外国産農産物がささえていることになり、日本人の体を原産地表示すれば“外国産”ということになってしまうのです。
私たちは、市販のハンバーガーとピザの自給率を調べました。すると、原材料のほとんどが外国産で自給率もほぼゼロでした。ユネスコの無形文化遺産にも登録された「和食」の代表とされる、おせち料理(市販のもの)の自給率も調べた結果、日本の食料自給率と大差ないこと(4割程度)がわかりました。
自給率38%という数字も、実は肥料や飼料、種子の自給率の低さを考慮すると、実際には10%あるかないかの「砂上の楼閣(ろうかく)」です。国内栽培の野菜の種子は約9割が海外で生産されています。例えば、日本の伝統的な京野菜。種子の生産地は九条ネギがイタリアや南アフリカ、京ミズナがイタリア、長ナスが中国など、種子は海外からの輸入品なのです。
多くを輸入飼料に頼る畜産物でみると、飼料の自給率を反映した本当の自給率は、牛肉は9%、豚肉は6%、鶏肉は8%足らず。飼料自給率を考慮した牛乳・乳製品の自給率は26%となります。ニワトリにはトウモロコシのような穀類などの濃厚飼料(ほとんど輸入)を給餌するため、飼料自給率は12%と低くなります。さらにヒナはほぼ100%輸入であり、輸入が止まればほとんどゼロ%になってしまいます。
今後の連載で、日本の食料事情がいかに「ヤバい」か、食料・農業をめぐる現状と農政の問題についてみていくことにします。
かつまた まさし
農民運動全国連合会の常任委員。新聞「農民」の編集長も務める。
(民医連新聞 第1790号 2023年9月4日)
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