いのちと暮らしの守り手として平和と人権を守り抜く
全日本民医連70周年記念式典では、看護学者の川嶋みどりさんが講演。概要を紹介します。
全日本民医連が生まれた1953年、私は看護師3年目。だから私の方が少しお姉さんですね。
軍国少女だった戦時を経て、いのちと健康を守る看護の仕事を選んだ私は、いのちを奪う戦争は、どんな理由があっても絶対に許せません。あらゆる戦争・紛争で犠牲になるのは、無辜(むこ)の人。ある筋ジストロフィーの青年は、「病気で死ねるのは幸せ。平和だから」と語りました。よりよい看護実践は平和あってこそ、なのです。
敗戦時の日本は、近代国家をめざした明治元年から77年。そして戦後78年の今、戦争か平和かの岐路にあります。そんななか、戦時の逆流に抗し差別のない平等な医療をめざした無産者診療所を源流にもつ全日本民医連が、70周年を迎えたことは感慨無量。平和と人権のために憲法を守り抜き、民医連綱領の目標を普及することが、人びとの尊厳あるいのちと暮らしの実現に通じる道です。
歴史に学びたたかい続けよう
誰もが尊厳ある生を全うして生きぬくためにこそ、医療・看護・介護はその知と技術を駆使すべきです。いのちと暮らしを脅かす健康障害、自然災害、感染症パンデミック、そして最大・最悪の戦争、そのすべてに直面している今だからこそ、私たちに何ができるかが真剣に問われています。
戦争の記憶は遠くとも、人間は歴史から学び、想像し、行動できます。ある戦時救護看護師は、「この仕事を、生命に対する畏敬も尊厳もたやすく消し飛んでしまう戦争に役立たせることは、この上ない悲劇」だと言いました。医師が非道な戦争犯罪に加担した加害の歴史に、誰も責任をとっていないことも忘れてはなりません。
国内外多くの人びとが犠牲になり、戦後も大変苦しい生活が続くなかで、二度と戦争をしない決意を世界に示した「不戦の誓い」。犠牲者の尊厳ある死を保つためにも、この憲法9条を守らなければなりません。
憲法25条2項は国に、国民の生存権を保障することを義務づけています。社会保障を良くするために、胸をはって国に処遇改善を要求していい。いのちと暮らしを守るための職場環境を整えることは、国民の権利。患者と連帯してたたかいましょう。
92歳の私も、いのちある限りたたかい続けます。
(民医連新聞 第1790号 2023年9月4日)