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民医連新聞

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相談室日誌 連載546 無低診だけでは救えない外国人事例に向き合い実態告発を(千葉)

 Aさんは60代の女性。30年以上前にフィリピンから生後半年の息子とともに来日。透析が必要な状態で当院へ転院。無料低額診療事業を利用しました。在留資格がない状態で、多額の他院の医療費と家賃の滞納があり、息子のわずかな収入で生活していました。弁護士の支援で、入院から1年半後に在留資格を得ることができました。息子は定住者、Aさんは特定活動の在留カードの交付を受け(生活保護は対象外)、住民登録、国保の加入、介護保険の申請、身障手帳の申請を行い、退院に向けて準備を開始。息子は定住ビザ取得後、就労が認められたため、すぐに働き始めました。
 Aさんは「家に帰り息子と暮らしたい。早く退院したい」と強く希望しました。日中独居でサービス利用が必要でしたが、金銭的負担軽減のために最低限の導入で退院しました。負債や家賃の負担もあり、息子の収入では介護サービス利用料まで支払うことができず、滞納が続きました。退院して半年後、両下肢の壊疽(えそ)で再入院。当院では治療困難な状態のため転院し、その後亡くなりました。医療費は重度心身障害者医療費助成で無料でしたが、当院では無料低額診療事業の対象になる食費やアメニティー代の負担が他院では必要なため、転院先決定も容易ではありませんでした。
 息子は乳児期から30歳まで、在留資格のない生活を送ってきました。学校には行けたものの、人目を避けての生活を送ってきました。在留カード交付の際のうれしそうな顔と、Aさんが亡くなった連絡の際の「二和病院に入院できて人生が変わりました」という言葉が印象的です。在留資格を得ることがゴールではなく、課題は山積みでしたが、Aさんと息子の強い絆で乗り越えることができたのだと思います。
 仮放免、在留資格のない外国人からの受診相談が増えています。無料低額診療事業だけでは生存権を保障できません。外国人や日本人の人権が保障される社会の実現のために、国の施策を変えていく必要があると日々感じています。私たちは、目の前のケースに真摯(しんし)に向き合い、実態を伝えていく役割があります。今後もSWとして、今できることは何かを考え、精いっぱい行動していきたいと思います。

(民医連新聞 第1789号 2023年8月21日)