平和、人権、いのちを守る半年間に 第3回評議員会方針(案)のポイント 全日本民医連事務局長・岸本啓介さんに聞く
8月20日、全日本民医連は45期第3回評議員会を開催します。開催に先立ち、評議員会方針(案)のポイントを全日本民医連事務局長の岸本啓介さんに聞きました。(稲原真一記者)
戦争の実相を学び行動を
今回の方針(案)は、運動課題を重点として全面的に提起した内容です。背景には第211国会で、政治が憲法や人権を無視して暴走する戦後最悪の情勢があります。第1章では、困窮のさらなるひろがりや社会保障の縮小、人権軽視の国会運営などを明らかにし、その根本に戦争する国づくりがあると指摘しています。
今の日本は安保3文書の改定により、敵基地攻撃能力の保有、5年間で43兆円の大軍拡など、軍事優先の社会になろうとしてます。南西諸島のミサイル配備や基地強化、関東でもオスプレイの飛行訓練が頻繁に行われ、住み慣れたまちが戦争に向かっています。
綱領で人権、憲法を守り、戦争政策に反対することを掲げた私たちが、何を大切にするのか議論してほしいと思います。職員、共同組織で沖縄戦や被爆者の声など、戦争の実相を肌で感じて学び、いのちを守る立場から行動することを呼びかけます。そして78年間、日本が戦争に加担することを止めてきた憲法9条の力に確信を持ち、改憲を阻止しましょう。
旧優生保護法の調査報告書が出ました。国として戦後最大の人権侵害に向き合う機会であり、あらためて職員にも「旧優生保護法下における強制不妊手術問題に対する見解」と、第2回評議員会の学習を呼びかけます。
社会保障の充実が必要
第2章では、来年の医療・介護・障害のトリプル改定での前進と、働き方改革に合わせた医師の絶対数増、経営のたたかい、共同組織の前進を訴えました。
岸田政権は大軍拡をすすめる一方、コロナ禍で露呈した脆弱(ぜいじゃく)な医療体制や社会保障には目も向けません。「大軍拡ではなくケアを」の声をあげ、いのちと健康を守る運動にとりくみましょう。
また保険証廃止によるマイナンバーカードの強制は、国民の受療権を奪うものです。「保険証なくすな」の1点でさまざまな団体とも共同し、全国で大きな運動をつくることを提起します。
新潟では働き方改革で大学の医師派遣がなくなった地域で、妊婦が出産できなかった事例が報道されました。今の働き方改革では、医師だけでなく国民のいのちと健康も脅かされます。医師の増員なしに根本的な解決はないことを他の医療機関や住民と共有し、地域との共同で真の働き方改革と医師増員を実現しましょう。
経営課題では、診療報酬や介護報酬、社会保障の充実なくして、経営改善もあり得ないことを記載しました。多くの民医連事業所が、かつてない危機的な経営状況にあります。資金不足や収益が改善せず、予算が見通せない法人もあります。事業の具体的な対応も必要ですが、同時に他団体とも協力しながら、社会保障を充実させるたたかいが重要です。
私たちの活動のすべてのパートナーである共同組織は、コロナ禍でさらに重要性を増しています。この3年間、活動をともにできなかった職員も多く、今一度、学びと共同を深めましょう。強化月間では『いつでも元気』を普及し、地域の変化を捉えながら、新しい仲間や運動をつくりましょう。
1職場1アウトリーチに、共同組織とともにとりくみましょう。
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46回総会までの半年間は、平和と人権、いのち優先の社会をめざす実践が、ますます重要になります。入管法改定やLGBT理解増進法でも、当事者や市民による廃止運動が始まり、国民の願いと政治とのずれは大きくなっています。来るべき衆議院選挙では岸田政権を退陣させ、改憲を阻止し、私たちの願う政治を実現しましょう。そして一人ひとりの健康に留意しながら、46回総会では沖縄に笑顔で集まりましょう。
(民医連新聞 第1788号 2023年8月7日)