憲法カフェ ぷち㉚ 「袴田事件」と憲法37条
「袴田事件」が話題です。1966年、現・静岡市で犠牲者4人の強盗殺人・放火事件が起き、元プロボクサーの袴田巌(はかまだいわお)さんが逮捕されました。袴田さんは無実を訴えましたが、警察の取り調べは連日長時間、水・睡眠・トイレも許さない上、罵声と暴力で身体的自由を激しく傷つける拷問並みのものでした。虐げられた袴田さんはいのちを守るために「自白」しましたが、仕方なく話を創作した「自白」調書の内容は矛盾だらけで、証拠の価値はありません。さらに証拠とされた「犯行時の衣類」は、小さすぎて袴田さんははけません。
裁判所は、無実を訴えた袴田さんの声に耳を貸さずに死刑判決を出し、最高裁で確定してしまいました。しかし事件発生から57年、ついに東京高裁は3月13日に再審(裁判のやり直し)開始を認める決定を出しました。
検察は、再審でも袴田さんの有罪を主張するとのこと。東京高裁が、捜査機関による証拠ねつ造の可能性を指摘し、袴田さんの潔白をほぼ見越しているにもかかわらずです。かたくなに反省も謝罪もしない検察は、「迅速な裁判を受ける権利」(憲法37条)を含む人権をあまりにも軽視しています。検察は、一刻も早く無罪判決、そして袴田さんの名誉と尊厳の回復に向けて動くべきです。(明日の自由を守る若手弁護士の会)
(民医連新聞 第1788号 2023年8月7日)