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民医連新聞

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ともに生きる仲間として―非正規滞在の移民・難民たち 第9回 医療費が払えない仮放免者たち 文:原 文次郎

 在留資格を持たないか、6カ月未満の短期の在留資格の外国人は住民登録の対象外で、自治体から住民向けの公的な支援を受けることができません。仮放免者は就労を許可されないため自分で働き収入を得られないだけでなく、国民健康保険の対象にもならないため、体調を崩し、必要な医療を受けようとしても医療費の負担が問題になります。無保険では自己負担が保険点数の100%に留まらず、大学病院などの医療機関によっては200~300%にのぼることもあります。これは医療を受けることを目的に来日する富裕層を対象にしている制度設計の問題でもあります。
 埼玉県に住むトルコ国籍のクルド人(※)の難民申請者のAさんは、くり返し心臓発作を起こし、数カ月に1度の頻度で救急搬送されました。Aさんの医療費の総額は200万円を超えます。無料低額診療事業などの支援制度を活用し、請求額は50万円程度に抑えられましたが、それでも一括では払えず、知人の援助により、月額2万円を分割払いで返済し続けています。完済には数年かかる計算ですが、その間にもたびたび発作を起こし、医療費がさらに積み上がることが懸念されます。他にも小さな子どもが発熱しても医療費が払えず病院に行くことをためらったケースや、大人でも我慢して病院に行かない間に病気が重篤化してしまった、などいのちにかかわるケースも、同じクルド人コミュニティーの間でも起きていると聞きます。自助努力や民間の支援に任せるのではなく、医療を受ける権利は国籍や在留資格にかかわらず等しく保障されるべきで、そのために公的な支援が必要です。
 クルド人は主にトルコ、シリア、イラク、イラン、アルメニアなどの地域に住む少数民族。トルコと日本の間には相互ビザ免除の協定が結ばれ、ビザの要らない旅行を理由に来日するトルコ国籍のクルド人は多数にのぼり、主に埼玉県蕨市や川口市に集住する在日クルド人の人口は約2000人にのぼる。多くがトルコでの迫害から逃れ、来日し難民申請をしているが、日本の入管は裁判で認められた1人を除き難民と認めていない。


 はら ぶんじろう 一般社団法人 反貧困ネットワーク 外国人支援担当理事

(民医連新聞 第1788号 2023年8月7日)