無差別・平等をめざしSOGIと向き合う 北海道勤医協
全日本民医連はLGBTQ(性的マイノリティー)やSOGI(性的指向や性自認)への理解をすすめることを呼びかけています。北海道勤医協では、若手や有志の職員が集まり、新たなとりくみが始まっています。(稲原真一記者)
出発は自主活動
北海道・勤医協中央病院では今年4月、有志で始めた活動がSOGIE(SOGIに性表現を加えた言葉)プロジェクトとして正式に出発しました。
昨年6月に全日本民医連が開催した、神奈川・川崎協同病院の吉田絵理子さん(医師)の「すべての民医連職員のためのLGBTQ講座」を視聴した小内ゆいさん(医師)が、北海道民医連のジャンボリー事務局内で内容を報告。「セクシュアリティーが人権や差別につながる問題と気づき、無差別・平等をめざす民医連がとりくむべきだと痛感した」とのべました。報告後に「いっしょに行動しませんか?」と呼びかけ、応じた4人で昨年8月から活動を開始。その一人の長屋春香さん(現札幌病院SW)も吉田さんの講演で心を動かされ、「これまで身近な差別に何もできず、何か行動したいと思っていた時に声をかけてもらった」とふり返ります。活動は各職場での少人数の学習会から始めて理解者を増やし、平行して現メンバーの同院副事務長の古田陽介さんを通じ、「正式なプロジェクトに」と管理部に訴えました。
職員の受け止めはさまざまですが、積極的に動いてくれる部署も。同院健診センター課長の坂本悠子さん(事務)は、「以前から当事者ではないかと感じる受診者はいた」と言います。学習を通じ、当事者がいやな思いをしないよう、まずはアライ(支援者)であることを示すことが必要だと考え、健診の問診票にメッセージと虹のマークの記載を検討。トイレや更衣室の課題もありますが、当事者の意見も聞き、具体的な対応を模索しています。
思いはつながる
同法人の札幌病院でも吉田さんの学習会がきっかけで、昨年9月に「LGBTQチーム」を結成しました。呼びかけたのは、同院副院長の西岡利泰さん(医師)。個人の経験や学習会などで学び、「ずっとこの課題にとりくみたかった」と語ります。有志の自主参加方式で、現在20人弱の多職種メンバーが参加。動機も当事者の患者との出会いや、身近な差別や子どものことから関心を持ったなど、さまざまです。定例活動はなく、日々LINEグループで情報交換や気になることを出し合い、必要に応じて集まっています。
昨年11月に、当事者で北海道LGBTネットワーク事務局次長の工藤久美子さんを招いた学習企画を開催。院内にだれでもトイレを設置するなど、環境整備にもとりくみ、SOGIに配慮した企業を認定する「札幌市LGBTフレンドリー企業」に応募し、今年5月に認定を受けました。
西岡さんに活動の目標を尋ねると「だれもが働きやすく、かかりやすい病院にすること。マイノリティーへの配慮は、すべて人のかかりやすさにつながるはず」。
当事者とともに
中央病院のSOGIEプロジェクトは、異動などもありましたが、元のメンバーはほぼ変わらず、新たなメンバーを迎えて、現在8人で活動中です。7月25日には、前述の工藤さんを講師に、中央病院を会場に県連全体に呼びかける学習会を企画しています。離れた事業所からも業務終了後に毎週集まり、準備をしています。長屋さんは「大変だけど苦ではない。意見がぶつかることもあるけど、真剣に議論することが楽しい」と笑います。
会議に参加した工藤さんは「自分事としてセクシュアリティーと本気で向き合い、無差別・平等を実践したいという熱意を感じる。長年の活動でも、こんな医療機関は他になかった」と感心します。
「今後は若手以外にも仲間を増やすことが課題」と古田さん。小内さんは「参加者が、この病院で働いていてよかったと思える学習会にしたい。行動を起こしてくれる人が、一人でも増えればうれしい」と期待します。
(民医連新聞 第1787号 2023年7月17日)
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