診察室から ひろがれ、一人ひとりを多方面から診る医療
コロナも5類へと移行し、人びとの活動がコロナ前のように活発化しているなか、歯科でも日々さまざまな訴えを持った患者が、たくさん来院します。小さな子どもから高齢者まで幅ひろく来院しますが、先日101歳のご婦人が、家族といっしょに来院しました。もちろん高齢ですので、身体の機能も低下していましたが、家族によるサポートが十分あり、当院まで足を運んでくれました。
少子高齢化がすすみ、患者も高齢化していますが、同時に、それまで現役で働いていた歯科医師も、高齢化しているという事実を実感することが多くなりました。
「長年行っていた歯医者さんが辞めれられたんです。だからこちらへ来てみました」という発言も、最近は聞くことが多いです。
今までいてくれるのが当たり前だと思っていた年上の存在が、だんだんと減ってきている現状に少し戸惑いも感じつつ、そこで長年診てもらっていた人たちの行き場を、地域全体で担っていかないといけないのだと思います。
一人ひとりの患者に対し、さまざまな分野の医療が提供される昨今、分野ごとに独立して介入しているようでは、良い医療提供とはならない。それを、日々の診療において感じます。当院では外来・病棟往診・施設や居宅への往診を行っており、外来では基本的に自分自身で来院できる人、病棟往診や施設などへの往診では、外来に来られない人たちを診ています。しかし中には、病棟に入院中の患者が、初めは動くことができず往診となっていても、だんだんと治療がすすみ、歩けるまでに回復、そして退院後は外来へ継続して通院するケースもあります。そのような場面に出会えた場合は、こちらもとてもうれしく思います。
一人の患者をいろいろな方面から、各分野の専門家が情報共有しながら診るという状況が、どこでも一般的になれば、今より暮らしやすい世の中になるでしょう。せっかく医療従事者になったのですから、それに少しでも貢献できたらと思います。(福井実加子、広島・生協さえき歯科、歯科医師)
(民医連新聞 第1787号 2023年7月17日)