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民医連新聞

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ゴミ問題から社会が見える 地域とつながる海岸清掃 島根・出雲医療生協

 近年、温暖化やゴミによる環境汚染が問題になっています。島根・出雲医療生協では、地域の清掃活動を通じて身近な環境改善だけでなく、さまざまな問題への気づきや、共同組織と職員が元気になるとりくみを展開しています。(稲原真一記者)

衝撃の現実

 5月26日、7回目を迎える海岸清掃に集まったのは、生協組合員や職員、地域の住民、ボランティア団体など90人。職員がゴミの見分け方や集め方を説明すると、参加者は軍手とゴミ袋を手に次々と浜辺へくり出します。
 何度も参加している参加者は、手慣れた様子でゴミをどんどん集めますが、なかにはよくわからないものもあり、「これはなにかね?」「分別がわからんね」と相談しながら作業をすすめます。ゴミでもっとも目立つのは、プラスチックなどの石油製品。ペットボトルや容器、掃除用具などの日用品も。大物では冷蔵庫などの家電製品、漁業で使うブイや網なども打ち上げられています。日本語だけでなく、中国語や英語、ロシア語、ハングルなどが書かれた物まであり、世界中のゴミがあることに驚かされます。この日は約1時間の清掃で、45Lのゴミ袋約100袋分のゴミと粗大ゴミを合わせて、4トントラック約1・5台分が集まりました。
 地元参加者は「50年前はハマグリを拾ったりして遊んだ海岸。ここまでゴミが多いことにショックを受けた」と言います。出雲市民病院の職員の三浦千鶴さん(事務)は、「安心して子どもを遊ばせることもできない。地域の遊び場が失われている」と危機感を持ちます。

まずは身近な問題から

 出雲医療生協で環境問題への関心が高まったのは、2019年に行ったSDGs(※)の学習会がきっかけでした。同生協職員でまちづくりサポート課の小村和子さん(事務)は、「大切だけど壮大すぎて、どうとりくむか悩んだ」とふり返ります。そこで身近なことからとりくもうと考え、始まったのが海岸清掃でした。海岸のある長浜支部の支部長の藤江弘道さんに相談し、20年6月に第1回を開催。コロナ禍で集まることがタブー視された時期ですが、感染対策をして27人が集まりました。
 回を重ねるごとに参加者は増え、今回は市内の19支部のうち15支部が参加。小村さんは「交流の途絶えていた支部員が集まる場にもなっている」と言い、藤江さんも「遠方からの参加者も多く感心する」と共同組織の力を感じています。最近では参加者のための駐車場の提供や整備に地元の住人が動いてくれるなど、「地域の思いがつながっている」と言います。

ともに学び課題を共有

 同生協は他に「まちなか清掃」の活動もしており、今年4月には職員教育にも位置づけて新入職員22人が参加しました。参加しやすい活動でありながら、組合員が生協の役割や地域の課題を語ることで、職員が住民の目線を学び“共同のいとなみ”を実感する場にもなっています。小村さんは「若手職員と接して組合員も元気になり、活動の原動力になっている」と手応えを感じています。
 「とりくみは環境問題だけでなく、地域や社会の課題に目を向ける機会にもなっている」と話すのは、同生協の専務理事の川本悟さんです。参加者は清掃活動から地元の現状を自分事と捉え、原因である地域活動の減少や大量のゴミを生み出す社会構造にも目を向けるように。活動を通じ、行政や企業、他団体などとこれまでにないつながりも生まれ、地域の課題を共有しています。川本さんは「このつながりを生かし、地元の中学校や自治会などの活動にこちらから合流するなど共同をすすめ、より良い地域づくりに貢献したい」と展望を語ります。

※ 2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」。貧困の撲滅やジェンダー平等、自然環境保全など17の目標を定める。

(民医連新聞 第1786号 2023年7月3日)