ともに生きる仲間として―非正規滞在の移民・難民たち 第7回 入管法改定案は可決しても、私たちはともに生きて行く 文:原 文次郎
全国各地の街頭で反対し抗議する支援者や多くの市民の声にもかかわらず、入管法改定案は6月9日に、参議院本会議で可決成立しました。
国会審議の間には、「難民はいない」と発言する難民審査参与員に偏って多くのケースが与えられ、迅速な審査を理由に口頭審査を省いて配分される難民審査のプロセスの問題が判明しました。大阪入管の常勤医師が泥酔していたなど、名古屋入管でのウィシュマさん死亡事件を受けて約束した入管収容施設の医療体制の見直しが、きちんと行われていないことも明らかになり、立法事実が根本的に覆る事態となりました。しかし、それでも法案は、「送還忌避者」に犯罪者が多いと主張し、人権より国益と叫び、子どもの在留資格を取引材料に使う議員らにより、人のいのちにかかわる問題を多数決の論理に委ねて、可決成立しました。
私たちは、国籍にかかわらず! 在留資格にかかわらず! 日本人でも、ナニジンでも、ここ(日本)に生きている人として、貧困状態に置かないことを目標に活動してきました。在留資格をはく奪された移民・難民は、仮放免では就労が認められず、健康保険に加入できないため、病院に行くこともできません。日本で基本的人権を奪われてもなお、送還されることを拒否するのは、送還先で迫害を受ける恐れがある難民申請者の、生きるための必死の抵抗です。
国会審議中に浮上したさまざまな問題は、何も解決していません。私たちが今後も出て来るだろう新たな事実を追及していくことにも変わりはありません。そして法律ができても、それを無効化する運動をひろげていきます。在日外国人・難民支援団体に限らず、さまざまな分野の支援団体、専門家、市民、学生による入管法改悪反対のアクションが、これまでに類を見ない規模で、全国各地で開催されました。私たちは、市民社会のメンバー誰ひとりであっても排除されることを許容しません。「送還忌避者」を国家が排除しようとするならば、市民社会は、全力でそれに抵抗し続けます。
はら ぶんじろう 一般社団法人 反貧困ネットワーク 外国人支援担当理事
(民医連新聞 第1786号 2023年7月3日)
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