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民医連新聞

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相談室日誌 連載542 当事者の希望に応える多職種とともに環境評価(大阪)

 訪問診療医から上肢の浮腫と挙上困難で紹介入院した80代のAさん。介護者である50代長男との2人暮らし。介護認定は受けているものの、前回退院時は長男が自分でみるとのことで、退院後、訪問診療と福祉用具の利用にとどまりました。今回は2度目の入院で、訪問診療医より、「長男は本人を家ではみられないから施設入所に同意した」との申し送りでした。
 しかし入院後、ソーシャルワーカーが面談した際、長男は家でみたいとの強い気持ちを話しました。病棟スタッフと話し合い、自宅へ退院後も介護サービスを使わない可能性や前医の懸念もあったので、看護師やセラピストから長男に現状のADLや自宅でのリスクを説明。福祉用具以外の介護サービス利用には同意しましたが、自宅退院への気持ちは変わりませんでした。
 長男より、「本人も自宅退院を望み、自分が介護をしたいので仕事を辞めてまでがんばってきた」との話がありました。
 体調悪化や共倒れを危惧し、最終的に看護小規模多機能型居宅介護の利用を提案したところ、ごく近所だったことも幸いし、利用を希望。長男は離職後でしたが、本人の財産で生計維持も可能との返答でした。
 スタッフ一同の気がかりを残しながら、Aさんは退院しましたが、今でも元気に通所し、たまに泊まっているとのこと。定期的な診療も受け、長男も安心して自宅でみることができて喜んでいるようです。
 退院先を選択する場面で、時には医療従事者側から、「自宅は無理ですね」と捉えられる発言をせざるを得ない場面もあります。それは自宅へ退院した場合の介護負担やリスクを評価した上での提案や説明であるべきで、生活の場を選ぶ場面で最終的に判断するのは当事者です。医療従事者側の価値観を押しつけていないか、当事者や家族の希望を打ち砕いていないか考慮が必要ではないでしょうか。
 退院先の選定について、当事者の希望だけではなく、公的サービス・地域の資源も含めた環境設定を吟味して退院支援ができているだろうか? ソーシャルワーカーとして当事者の思いを代弁するだけでなく、取り巻く環境を多職種とともにていねいに評価し、対応する必要があると思います。

(民医連新聞 第1785号 2023年6月19日)