相談室日誌 連載541 親の年金で生活する子世帯増 必要な相談しやすい仕組みを(三重)
50代のAさんは、80代の父親の介護を理由に就労できず、父親の年金で暮らしていました。SWとしては父親の介護のことでかかわっていましたが、父親が亡くなったら、Aさんはどうなるのだろうと心配していました。その後、父親が亡くなり、Aさんは1カ月前に仕事を始めましたが、身体の不調で退職。住まいは親の兄弟から無償で借りているので退去する必要もありました。住居はかなり老朽化し、4畳半の部屋と台所のみ。トイレへ行くまでの床は底が抜け、通れない箇所がいくつかありました。屋根は半分なく、ビニールシートで覆っているため、台風シーズンには吹き飛んでしまう恐れがあり、毎年冷や冷やしながら生活をしていました。わずかな貯蓄で生活を続ける必要があったAさんは、市営住宅への転居を検討しました。しかし当時、2人の緊急連絡先が必須で、頼れる親族がいないことで借りられませんでした。
SWと定期的な面談をくり返しながら、就労活動、住居確保に向け、Aさんなりに知人を通じてがんばっていました。最終的には生活困窮窓口や市役所の協力で、生活保護を受けながらAさんの一番の希望だった長期的な就労先を見つけることができ、エアコン、トイレ、浴室完備の一軒家を借りることができました。
数年前からAさんのような、親の年金で生活している世帯からの相談が増加しています。本来なら、親の年金は親自身の生活費、介護費用に充てるべきですが、子が無職となり、家族の生活費になっています。8050問題と言われていますが、子が40代というケースもあります。
医療従事者として、患者の病状、生活を中心に考えることが第一ですが、親の死後に残された子世代のことが気がかりになります。メンタル不調やコミュニケーション障害などを抱えていることもあり、支援につなぐことも容易ではありません。
Aさんは当院のかかりつけの患者だったので、支援につなげることができましたが、若い世代は病院にかかる機会が少なく、接点を持つことが難しいと感じます。
誰もが気軽に相談しやすい仕組みを構築し、患者、家族に対して真摯(しんし)な対応ができるように努めていきたいです。
(民医連新聞 第1784号 2023年6月5日)
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