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民医連新聞

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副作用モニター情報〈594〉 エソメプラゾール(ネキシウム®)による低マグネシウム血症

 今回、プロトンポンプ阻害薬(PPI)エソメプラゾール(EPZ)による低マグネシウム(Mg)血症の副作用が、当モニターに初めて報告されたので紹介します。

症例)80代男性
開始1年6カ月前:Mg1.86mg/dl(基準値:1.8~2.6mg/dl)、カリウム(K)3.5mEq/L(基準値:3.5~5.0mEq/L)
開始日:上部消化管内視鏡検査で胃潰瘍、びらん性胃炎を指摘され、EPZ20mg開始(H2ブロッカーから切り替え)、K3.7mEq/L
9カ月後:Mg1.69mg/dl、K3.1mEq/L
2年6カ月後:Mg1.69mg/dl、K3.0mEq/L、内服カリウム製剤開始
3年46日後:K2.9mEq/L、内服カリウム製剤開始後も低K血症遷延(下痢なし、食事摂取十分)、EPZ長期服用による低Mg血症に伴う二次性低K血症の可能性あり、Mg値測定→Mg1.43mg/dlと低下あり、EPZ中止
中止8日後:Mg1.61mg/dl、K3.3mEq/L
中止23日後:Mg1.86mg/dl、K3.6mEq/L
中止49日後:K3.9mEq/L

* * *

 PPIによる低Mg血症は、2006年に初めて報告され、2011年に米国FDA(アメリカ食品医薬品局)から「長期のPPI使用は低Mg血症を誘発する可能性がある」と注意喚起されました。PPIの使用と低Mg血症発現リスクとの関連を評価した9つの観察研究のプール解析において、相対リスクは1.43倍(95%信頼区間:1.08-1.88)、という報告があります。作用はクラスエフェクト(薬効群に共通する効果)とされており、いずれのPPIでも発症する可能性があります。多くは長期の使用(1年以上)で発症し、可逆的で薬剤中止後にMg値は速やかに改善するとされています。本症例もEPZを3年以上の長期使用で、かつ中止後すみやかにMg値の改善を認めています。
 発生機序は明確ではないものの、PPIの使用により腸管内pHが上昇し、腸管内
でのMg吸収をつかさどるTRPM(transient receptor potential)6チャネルを介したMg吸収の低下が示唆されています。
 低Mg血症の臨床症状は、食欲不振、悪心、嘔吐(おうと)、傾眠、手足のこわばりなどさまざまです。さらに、多様な機序を介して、二次的に低カルシウム(Ca)血症や低K血症をきたすとされています。
 PPI長期服用者で、原因不明の上記症状や低Ca血症、低K血症を認めた場合はまれではあるものの、PPIによる低Mg血症を疑い、Mg値の測定を検討しましょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1782号 2023年5月1日)

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