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民医連新聞

民医連新聞

診察室から ふと、雪の降った翌日に

 久々に雪が降って路面が凍り、転倒される方が続出のようです。たくさんの方が来院されました。
 翌日、路面が広範に凍結しており、滑りやすく、本当に危険でした。凍結していない本来の路面がしばらく続くと、それだけでうれしくなります。普段、何でもないと思っていることのありがたさを知る瞬間の一つです。
 健康も同じでしょう。体調をくずしたり、けがをしてしまったときなど、健康でありさえすれば何でもできそうな気がしませんか。当たり前のように感じていた健康のありがたさを心底感じることでしょう。苦難に陥ったときのこんな気持ちをしっかり覚えていられたら、人はきっともっと優しく、もっとていねいに生きることができるのでしょうね。
 自然現象や健康面のことだけではありません。社会に目を向けてみましょう。誰かが言っていました。自立とは、一人で生きていけるということではない。社会のなかで、他者と協力して生きていけることだと。自分の食べているもの、身に着けているもの、どれをとっても、ほとんどの人は、自分のつくったものが、ただの一つもないことに気付くでしょう。一人で生きて行ける人はいない、行けるはずもない。どれだけの人たちの御蔭(おかげ)で生きていられるのでしょうか。
 当たり前と思っていることのありがたさを知ること、数知れぬ人たちの力で生きていられることに思いを馳(は)せること、これらは自然に感謝の気持ちにつながるでしょう。感謝の気持ちを持ちなさい、とよく言われますが、何か違和感を覚える、と誰かが言っていました。感謝の念とは、強要されるものでも、できるものでもなく、自然に心から湧き出てくるものではないでしょうか。そうでなければ本物ではないでしょう。そして、そういう気持ちになれたとき、人は真に自立し、幸福に近づいて行くのかもしれません。
 とある雪の翌日、ふと心に浮かんだことを、徒然(つれづれ)なるままに書き記してみました。(大井康二、千葉・船橋二和病院)

(民医連新聞 第1782号 2023年5月1日)

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