気候危機のリアル ~迫り来るいのち、人権の危機~ ⑨若者世代の声と気候正義 文:気候ネットワーク
2019年、若者世代が気候変動問題に対して声をあげる、グローバル気候マーチというムーブメントが世界中で話題となりました。この運動はFridays for Future (未来のための金曜日)と呼ばれており、2018年8月にスウェーデンで当時15歳のグレタ・トゥーンベリさんがたった一人で国会前に座り込み、国の気候変動対策に抗議したことから始まった運動です。その後わずか1年で、世界中で760万人が参加するほどの世界的なムーブメントとなり、2019年2月には日本でも東京からFridays For Futureの運動が始まって、全国各地にひろがりました。気候マーチの参加者はプラカードなどを持って、コールしながらみんなで行進しました。このコールに含まれる「Climate Justice(気候正義)」という言葉は若者世代の行動理由を示すキーワードです。気候変動の問題は、原因となっている側と影響を受ける側がかならずしも一致しておらず、国や地域、世代間での不平等・不公正を生む構造になっています(連載(7)~(8)で解説)。こうした格差を是正するという考え方が気候正義です。
特に気候変動の影響は、表面化するまでに時間差があります。そのため、温室効果ガスを多く排出した世代よりも、次世代に対してより強い影響があります。いわゆる世代間の格差です。現時点の若者世代や今後の将来世代がどのような世界で暮らすのかは、これからの私たちの選択にかかっています。
気候正義にとりくむ若者世代は、さまざまな活動を行っています。気温上昇を1.5度未満に抑えるために残された時間を示す「Climate Clock」プロジェクトでは、第1弾となる時計を渋谷に設置。国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)に関する映像ドキュメンタリーを制作する「record1.5」プロジェクトでは、エジプトに赴いて国際交渉の現場を撮影し、映像を発信する活動をしています。他にもProtect Our WintersやClimate Live Japanなど、ウインタースポーツや音楽分野と連携して気候危機を訴える活動が、日本でも始まりました。
こうした活動は気候正義に加えて、「科学者の声を聞いてほしい」という科学に対する強いメッセージも含まれています。これまで温室効果ガスを大量に排出してきた先進国は、気候の科学に向き合い、気候正義の視点にもとづいた責任を果たし、気候危機を克服した持続可能で公正な社会をめざすべきです。(延藤裕之)
気候ネットワーク
1998年に設立された環境NGO・NPO。
ホームページ(https://www.kikonet.org)
(民医連新聞 第1782号 2023年5月1日)
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