民医連結成70th④ 返ってきた署名に勇気をもらった 県内全事業所に署名郵送 滋賀民医連 地域でつながる介護改善の要求
滋賀民医連は、昨年11月、「介護保険制度の改善を求める請願署名」を県下約1000の全介護事業所に郵送。今年の1月までに174の事業所から、1605筆の署名が戻ってきました。とりくみを取材しました。(長野典右記者)
介護職員が声をあげる時
「こんなに反響があるとは思いませんでした」と語るのは、しが健康医療生協介護部長の木内尚さん(介護福祉士)。「今回の介護保険制度の改悪案に、介護職員が声をあげて運動していかなければという思いがあった」と言います。
昨年9月、厚労省は、介護保険の「負担と給付の見直し」で、介護保険サービスの利用料2~3割負担の対象拡大、要介護1・2の訪問介護などの保険給付外しなど、大幅な給付削減と負担増の案を示しました。
コロナ禍や物価高で利用者、事業所が困難に直面しているなか、あまりにもひどい内容。滋賀民医連は、介護事業所はどこでも怒っているはずだと、「介護保険制度の改善を求める請願署名」を県内にある全介護事業所約1000カ所に郵送することを決めました。「県連内すべての事業所に郵送の協力を呼びかけ、職員で手分けして発送した」と木内さん。
社保委員長会議を参考に
署名を県内の全介護事業所に郵送するとりくみのヒントになったのは、昨年10月の社保委員長会議で福岡民医連が報告した「地域での共同、共闘 医療機関・介護事業所との連携したとりくみ」。入院時食事療養自己負担額軽減を求める署名、75歳以上の医療費2割化反対の署名、コロナ禍でのすべての医療機関・介護事業所への財政支援を求める運動で、民医連外にもひろく賛同を呼びかけた経験でした。
同会議に参加した県連の社保委員長で、滋賀勤労者保健会専務の藤岡孝之さん(事務)が「滋賀でもやってみよう」と11月の県連理事会で提案し、決めました。
民医連事業所ない地域から
滋賀民医連は4つの診療所に介護事業所を併設していますが、その所在は県南部の3市にとどまり、民医連の空白地も多くあります。県内の介護施設・事業所で働く職員は3万5000人で、同県連の職員は250人、全体の0・7%にすぎません。
しかし、署名の郵送後、県連事務局には、「期限はいつまでですか?」「家族も署名してもいいのですか?」「もっと利用者に署名をひろげたい」との問い合わせがありました。
民医連事業所のない、琵琶湖の湖北・湖東の地域からも多く賛同が寄せられました。なかには1通に50筆を超える署名が入っていることや、料金受取人払いに配慮して切手を貼って送ってくれた事業所も。最終的には民医連事業所内で集めた署名もあわせて、4338筆に。在宅ケアステーションデイサービスこすもす施設長の勝嶌芳一さん(介護福祉士)は「郵送で返ってきた署名に勇気をもらった」とふり返ります。
今後はつながり生かして
膳所(ぜぜ)在宅ケアスケーション陽だまり施設長の宮城美香さん(介護福祉士)は「認知症を抱える家族に大きな負担になる思いを感じた。自分たちが励まされ、介護保険制度改善の運動の確信になった」と署名の反響を語ります。ぜぜ健康友の会会長の松村恒夫さんは「利用者の家族は悲痛な思いで暮らしている。介護保険制度が改悪されると困る人が多い」と実情をのべます。また同会の池内好子さんは「自助ばかり強調する介護保険制度の改悪は許せない」、清水久子さんも「認知症の患者が増えているのに、改悪案は国が何もしないのと同じ」と。
滋賀民医連会長の東(ひがし)昌子さんは、「危機感をもっている事業所が多く、存続の問題でもある。介護保険制度の改善は地域住民の普遍的な要求。介護ウエーブの構えを大きくすることでつながりを生かして、さらに運動をひろげていきたい」と抱負をのべました。
(民医連新聞 第1781号 2023年4月17日)