相談室日誌 連載538 現在進行形で複合化する課題 組織内共有と関係機関との連携(福島)
当院で約10年間、透析通院中の70代のAさん。脳梗塞後遺症で車いす生活を送ってきましたが、妻、息子の献身的な介護のもと、在宅で過ごしてきました。その後Aさんは大腸がんを発症し、術後からADL低下が著明に。認知機能や車いすに乗る体力も低下し、妻も心身共に疲労感が強く、自宅介護は困難との判断になりました。
退院支援にあたり療養先、金銭面、送迎手段の3つの課題に直面しました。金銭事情を抱える、透析管理の必要な人が入所できる施設数が足りない状況に加え、送迎対応の介護タクシー会社も空きがなく、療養先を決めることが困難になりました。当院には、透析管理の人を受け入れ可能なサービス付き高齢者向け住宅が敷地内に隣設していますが、常に待機者がいるため、タイミングが合わないと入所できない状況です。ケアマネジャー、SWで連携して探し、居住費を抑えている有料老人ホームから、ショートステイで長期間の受け入れ可能との返事があり、また透析通院交通費助成制度でほぼまかなえる料金設定をしてくれる個人介護タクシー会社が見つかり、Aさんは何とか療養先を確保できました。しかし、社会資源の不足という根本的な解決には至っていません。
当院は維持透析を受けている患者のリハビリおよび退院調整目的での受け入れをしていますが、Aさんと同様の課題に日々直面しています。療養可能な施設数が多くはなく、金銭面、送迎の問題に直面し、退院調整に苦渋し、長期入院に。自宅退院の場合でも送迎の課題は同様に起きます。長期入院で患者の体調も変化し、退院するタイミングを逃してしまったケースも存在します。透析患者のリハビリや退院調整を担う受け皿として、当院が果たす役割は大きいのですが、患者が望む生活をすみやかに調整できないことが多く、ベッド運用も滞り、病院としても歯がゆい状況です。
このように複合化する課題をSWとして、どう院内や地域に発信していくかが問われていると思います。患者のより良い生活を実現する上でも、現在進行形で起きている課題を組織内で共有し、行政や地域の関係機関に働きかけていくことが必要だと考えています。
(民医連新聞 第1781号 2023年4月17日)
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