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民医連新聞

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私がここにいるワケ 機械の先の“人”をみる 神野 善晴さん 鹿児島生協病院 臨床工学技士

 民医連で働く多職種のみなさんに、その思いを聞くシリーズ6回目は、医療器機の専門家、鹿児島生協病院の臨床工学技士の神野善晴さんです。(稲原真一記者)

 神野さんが鹿児島生協病院に入職したのは1991年のこと。看護師の姉の影響もあり、臨床工学技士という仕事を知って、東京の専門学校に進学しました。臨床工学技師が国家資格になったのは87年。当時は就職先を探すのも大変でしたが、以前父親が入院していた縁で同病院に就職しました。

■人生に寄り添う仕事

 神野さんの毎日の業務は、透析室で患者を迎えることから始まります。臨床工学技士の主な業務は「生命維持管理装置」の操作や保守点検で、なかでも血液透析装置の管理は大きな役割です。同病院の透析室は現在6床で、臨床工学技士6人、看護師2人の職場です。患者は透析導入期や入院が必要な重症者が多いのが特徴です。「初めての人は不安も大きく、重症の人はつらい症状を抱えている。安心してもらえるような声かけを意識している」と神野さん。
 透析は一日4時間、週3回の治療が必要で、いのちにかかわるため、祝日や年末年始でも休むことはできません。以前、外来の透析にもかかわっていた神野さんは、「長い時間をいっしょに過ごす患者とは、ただの患者と職員以上の関係になる」と言います。患者のなかには、体調が悪い時には強く当たる人もいますが、「自分が結婚した時には手づくりの色紙で祝ってくれて、うれしかった」とふり返ります。

■ひろがるフィールド

 コロナ禍では人工呼吸器と体外膜型肺(ECMO)などの需要が高まり、器機を管理する臨床工学技士にも注目が集まりました。昨年末から今年にかけての第8波では、鹿児島でも新型コロナ感染が拡大。コロナ陽性の透析患者の対応にも奮闘しました。
 医療が高度化するなかで、求められる仕事も増えています。同病院でも、心臓カテーテル手術で使用する、血管内超音波検査(IVUS)の操作や管理を担当。また呼吸器疾患の患者の在宅復帰を、看護師やリハスタッフなどと連携し、在宅機器の導入でささえる経験もしました。
 それでも「まだ職種としての認知度は低い」と神野さん。他職種からはいまだにME(Medical Engineer)と呼ばれることもあり、学会が統一するCE(Clinical Engineer)という呼称は定着していません。「Clinical、つまり臨床で患者とかかわる専門職だと知ってほしい。ただの機械屋ではなく、機械の先にいる人をみるのが、私たちの仕事」と強調します。

■全国の仲間を力に

 求められることが増えても、診療報酬ではほとんど評価されないことについて、「私たちは医療の安全や質を担保している。それが報酬上で評価されないのはおかしい」と指摘します。「現場の仕事が増え、タスクシェア・シフトが求められている。他職種が本来の役割に集中できるよう、サポートすることも必要」と、今後も連携をすすめるつもりです。
 神野さんが強く民医連を意識したのは、全国青年ジャンボリーでした。全国で同じ思いを持って働く仲間の存在を知り、民医連の力強さを感じました。法人全体の臨床工学技士は19人で、20~30代も多く、ジャンボリーには積極的にかかわってほしいと言います。
 一方で若手に民医連の魅力を伝えることには苦労しています。「他の医療機関にない民医連の強みは、患者のために社会保障や人権、平和を訴えること。福祉を削って軍事費を増やす今の政治はおかしい。若手にも一人の社会人、そして民医連職員として、関心を向けてほしい」と期待します。

(民医連新聞 第1781号 2023年4月17日)