ともに生きる仲間として―非正規滞在の移民・難民たち 第2回 入管法を改悪する立法事実はない! 文:大川 昭博
今回の法案提出理由として入管庁は、(1)退去強制に応じない「送還忌避者」の増加、(2)難民申請の濫用、(3)送還忌避者による犯罪の発生、(4)一時的に収容を解く仮放免許可中の逃亡の増加、を挙げています。
入管庁の資料では、送還忌避者は2021年末で3224人とされています。しかし大半は、法定手続に従って在留特別許可を求めている人たちであり、2020年中には22人が難民認定ないし在留特別許可を認められています。
また、送還忌避者のトップ3(2021年末)はトルコ、イラン、スリランカで、複数回申請が多い国トップ2(2018年末)はトルコとミャンマーです。共通するのは、日本での難民認定の実績がゼロに等しく(ミャンマーは2021年の軍事クーデター以降、難民認定されるようになりましたが)、かつ諸外国では認められることが多い国であるということです。難民認定率の低さが、「送還忌避者」をつくり出しているのです。
難民申請者のなかには、4回目の申請で認められた事案があります。異常な難民認定基準を変えることなく、異議を申し立てる難民申請者の送還を可能にする法案が通れば、真正な難民を帰国させる、という取り返しのつかない事態が発生します。
入管庁は、仮放免者の「逃亡」を強調しています。しかし仮放免中の人は就労も認められず、住むところを追われ、携帯電話代も払えず、一時的に入管と連絡が取れなくなる人もいます。
また送還忌避者の約3分の1が前科を有している、としています。しかし、仮放免期間中、つまり送還忌避者が犯した犯罪数はごくわずかであり、大半が、在留資格を有していた人が罪を犯して在留資格を失ったものです。入管庁は、「逃亡」や「前科」を強調し、危険な印象を振りまいているのです。
今回の入管法改定は、入管庁の印象操作に左右された「立法事実」(法律などの必要性や正当性を根拠づける社会的な事実)のないものであることを、ぜひ知ってもらいたいと思います。
おおかわ あきひろ 移住者と連帯する全国ネットワーク理事。『外国人の医療・福祉・社会保障ハンドブック』(2019年、支援者との共著)
(民医連新聞 第1781号 2023年4月17日)