私がここにいるワケ 働きがいがあり子育てに心配のない保育を 広島・ひまわり保育園 保育士 長谷川 清美さん
民医連で働く多職種のみなさんに、その思いを聞くシリーズ第5回は、保育の現場で奮闘する、広島・ひまわり保育園の保育士、長谷川清美さんです。(長野典右記者)
■発達の最近接領域に力
広島・福島生協病院に隣接するひまわり保育園から、22人の園児の元気な声が聞こえてきます。
同園は1963年に開設され、88年に現在の地に移転してきました。園長の長谷川さんは、幼稚園教諭に憧れ、卒業と同時に幼稚園教諭になるも、結婚したら退職するものと言われた時代。ここでなら育児をしながら働き続けられると、夜間院内保育をきっかけに同園に就職しました。
認可保育園になるまでは、限られた費用のなかで、手づくりのおもちゃ、中古の子ども用品を活用するなど、苦労は絶えませんでした。現在は認可保育園として、職員の子ども以外に地域からも子どもを受け入れ、安定した運営が行えるようになりました。
「当園では子どもの発達を促すための『大人の少しの手伝い』として『発達の最近接領域』に力を入れています」と長谷川さん。例えば寝返りをめざして、意図的に手や体を伸ばしたくなる位置におもちゃを置くなどし、園児をサポートします。園児ごとの目標を設定し、発達の見える実践ができると保育が楽しくなる、やりがいのあるプロの保育士をめざしています。
■国の低い配置基準
全日本民医連は保育交流集会を2年に1回開催しています。委託が増え、直営の事業所が減っていること、一人職場やパート職員が多いこと、また安全性や危機管理が共通の課題になっています。処遇改善や保育の専門性を高める研修、質の向上、後継者育成は喫緊の課題です。
国の保育士の配置基準は、ゼロ歳児は3人に対し保育士1人、1~2歳児は6人、3歳児は20人、4~5歳児は30人に対し保育士1人。4歳児以上の基準は、実に75年間も変わっていません。
一方、スウェーデンでは4歳児以上児で1人当たり13人、ドイツでは、3歳児以上は1人当たり13人で、日本は国際的に低い水準のままです。
長谷川さんは、乳幼児の時に軽く扱われたことが、大人になるまでの育ちに影響することを危惧します。保育士を増やして、処遇改善や保育の質の向上のためには国の支援で、安心して子育てできる環境をつくる必要があります。
また園児や職場、保育士自身を守るためには、公的な監査が必要と言います。「監査はいわば健康診断のようなもの。自分たちの保育は間違っていないことを確認し、指摘されたことは改善をはかり、必要な公的支援などは声をあげて要求をしていくことも大切」と言います。
■孤立した親をつくらない
地域で孤立した親をつくらないように、週に1回の「子育てひろば」、月に1回のゼロ歳児の集まりの「ぴよぴよクラブ」の時には、育児相談や子育て親子のつながりがひろがるよう、地域での保育園としての活動を続けています。「子どもを出産したら、親は愛情を注ぎ、お金の心配はない社会が必要。これは国が制度としてつくるべきで、今、防衛費に膨大な予算を使うことは、少子化対策に逆行している」と長谷川さん。
■被災地に震災支援
12年前の東日本大震災の時、いてもたってもいられず被災地に支援に入りました。各避難所をまわり、足湯や医療・育児相談、子どもたちのケアを行いました。
全国から集まった民医連の仲間が、昨日までいっしょに仕事をしていたかのように、心一つで奮闘する姿が忘れられません。「ほんとうに民医連で働いていてよかった」と思った瞬間でした。
(民医連新聞 第1780号 2023年4月3日)
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