診察室から ピンチこそチャンスでありたい
半年前に当院は電子カルテを一新しました。切り替えの日、院内は大混乱に陥り、サービスデスクの電話は鳴り止まなかったと聞きます。外来ベースで構築された電子カルテを入院ベースの大規模病院に導入するにあたり、実に1000超の問題点があがりました。
私はIT技術に大変興味があり、初期研修時代に応用情報技術者の資格を取得しました。電子カルテのような高度ソフトウェアの開発が、どれほど大変なことか想像されます。要望一つひとつに真摯(しんし)にとりくむ開発企業のみなさんに、心から敬意を表します。
最初は戸惑いが大きかった新電子カルテですが、今ではお気に入りです。実はカスタマイズ性がとても高いのです。オーダーごとに最適な画面構成とサイズを指定できます。頻用オーダーの型が作成でき、メモ機能も充実しています。看護師判断で使える指示に複雑なオーダーを用意でき、血液内科では高熱時対応が迅速化され、診療の質が上がりました。
電子カルテが切り替わった日、当院はピンチに陥りましたが、今は現在進行形で進化を続ける新電子カルテはチャンスだと考えています。開発企業はアイデアを次々に取り入れてくれています。将来的には、タブレットや人工知能の導入、多職種の知恵の集約を電子カルテで実現したいです。
後期研修の3年間、臨床の最前線で豊かな症例経験を積ませてもらいました。でもその間に、48人いた内科医は33人に減りました。3年前に自分が未来を信じた病院は崖っぷちにいます。こんな状況であっても大学に研修に出してもらえることになりました。豊富な症例をより深く診られるように、存分に学んできたいと考えます。
血液内科チームではいま、医師主導治験に参加すべく動き始めています。将来的には全国の民医連で手を取り合って、明日の医療を良くするエビデンスをつくり出せたら、どんなに素敵なことだろうと思います。ピンチこそチャンスでありたい、そう思う日々です。(原田知弥、北海道・勤医協中央病院)
(民医連新聞 第1779号 2023年3月20日)
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