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民医連新聞

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憲法、いのち守る高い倫理観と変革の視点養う職員育成を 第45期第2回評議委員会開く

 全日本民医連は2月18~19日、第45期第2回評議員会を東京と全国をオンラインで結んで開催し、評議員84人(予備評議員含む)と四役理事、会計監査、傍聴者など合計174人が参加しました。来年2月の第46回総会まで1年となり、憲法を守り、戦争させない運動、コロナ禍での住民のいのちを守るとりくみ、医師の働き方改革、経営課題への挑戦などを議論しました。(長野典右記者)

 柳沢深志副会長は「ロシアのウクライナ侵攻の半年で増えた二酸化炭素の排出量は、少なくともオランダの同時期の排出量に相当する約1億トン。戦争は温室効果ガスを大量に排出し、パリ協定の目標達成を難しくしている。戦争は環境破壊であり、戦争しない・させない意味を問い、地道にひろげていこう」とあいさつ。
 増田剛会長は「憲法という曲がりなりにも無視することができない共通の理解を、安倍・菅・岸田政権が大きく変質させた。民意と国会の軽視、『専守防衛』を投げすて、社会保障理念のゆがみの固定化など、この国のあり方の土台が壊されている」と指摘。「全日本民医連は今年6月に結成70年を迎える。45期の後半は平和・人権の大波を全国各地から発信しよう」と呼びかけました。
 岸本啓介事務局長が理事会報告。最初にトルコ・シリア大地震への緊急支援募金について提起しました。コロナ禍の困難が続くなか、受療権を守り暮らしをささえてきた民医連のとりくみとして、山梨勤医協がいのちを守る相談所活動で無料低額診療事業を知らせるテレビCMを始めたことを紹介。敵基地攻撃能力を持つことは軍拡を招き、日本を戦争に巻き込む現実的な危険性があること、平和的な外交努力こそ必要と訴えました。国連障害者権利委員会の審査と勧告の意義について、憲法と民医連綱領を羅針盤に、高い倫理観と変革の視点を養う職員育成のため、人権の世界的な到達点を学ぶ職員教育の組織的な強化と継続を、とのべました。

全体討論

 全体討論では、46の発言と4のフリー討論、11の文書発言がありました。
 沖縄の座波政美評議員は、沖縄から見える安保関連3文書について報告。辺野古埋め立て工事は工事着工から4年を経て、埋め立て総量は15%程度で、工期は20年以上かかり、工事中に地盤が崩落する危険もあると指摘。与那国島では日米共同統合演習が行われ、戦前に戻りつつあることを実感したと報告しました。
 福岡の田中清貴評議員は、県連での75歳以上の医療費自己負担2割化のアンケートのとりくみを報告。430件集約し、生活の厳しさが判明。「家計の状況が厳しくなる・どちらかといえば厳しくなる」と答えた人は67%。趣味や交際費の節約で、活動量を減らし、新たな要介護者の増加や、受診抑制による重症化、医療費の増大につながると指摘しました。
 滋賀の東昌子評議員は、県下1000カ所の介護事業所へ、介護保険制度改善の請願署名を郵送したとりくみを報告。滋賀民医連の空白地域でも「負担と給付の見直し」にはどこの介護事業所も怒っているはずと、昨年11月に約1000カ所に署名を郵送すると、174通、1605筆の署名が集まり、県連内の事業所も含め、4338筆になったことを報告しました。
 1日目の最後、日本障害者協議会代表の藤井克徳さんが講演しました(次号に概要を掲載予定)。
 討論の後、第2回評議員会方針案、2022年度決算・会計監査、2023年度予算を満場一致で決定しました。
 眞木高之副会長が、閉会のあいさつを行いました。

平和、人権、住民を守るために
評議員会の発言から

情勢に立ち向かう

 香川・大西和子評議員は、改憲・軍事大国化阻止、人権としての社会保障運動のとりくみを報告しました。香川民医連は、ロシアのウクライナ侵攻が始まった直後の昨年2月28日から、昼休みに抗議スタンディングを実施。のべ113回、1300人が参加しています。地元の野党議員や共同組織も参加するなど、運動がひろがっています。
 自治体への予算、政策要求運動には、のべ30人の職員が参加。「戦争する国づくりと医療・介護・生活要求の実現は両立しない。学習しながら統一地方選挙のなかで発信したい」と語りました。
 千葉・宮原重佳評議員は75歳以上の医療費窓口負担2割化についてのアンケート調査について発言。昨年12月から実施し、2月16日現在、350件超に。「2割の負担感」は「とても重い」「重い」を合わせると84%となり、「今まで通り受診する」は38%と少なく、負担を軽減する「激変緩和措置」で「手続きが済んだ」人はわずか19%。「手続きをしていない」44%、「手続きの仕方がわからない」が34%もありました。
 東京・内倉恵美評議員は、東京多摩地域の有機フッ素化合物(PFAS)による水質汚染について発言。米軍横田基地に隣接する昭島市の地下水にPFASが含まれ、汚染源として同基地内の泡消火剤の使用・漏出事故が疑われており、住民の健康への影響を把握することが求められています。すでに国分寺市2会場(87人)で住民の採血検査が行われ、採取者の85%が基準値超え(血(けっ)漿(しょう)濃度20ng/mL)という厳しい結果に。内倉さんは「汚染源を特定し対策を講じる運動をすすめ、基地の問題を明確化したい」と訴えました。
 福島・北條徹評議員は、東京電力が、福島第一原発の汚染水を今春、海に放出しようとしている問題について発言。東日本大震災・福島原発事故から約12年となった今も、県民は「事故前との比較で8万人が帰還していない」と北條さん。「事故の教訓を無視し、今なお続く被災者の苦しみを踏みにじるような対応は許せない。さまざまな人びと、団体と連帯をひろげ、海洋放出をやめさせるために活動していく」と決意を語りました。

コロナ禍での奮闘

 兵庫・大澤芳清評議員は「断らない発熱外来のとりくみ」について発言。尼崎医療生協病院は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともない、2020年4月に同外来を開設しました。21年からは重点医療機関の指定を受け、陽性者の入院受け入れを開始。何度も職員集会を開き、地域の受療権を守る立場を確認。外来では朝9時から夜20時まで診療が終わらなかった時もあり、「人数を制限しては」との意見も出ましたが、「断る説明をするより、診療をする方が長時間になってもがんばれる。地域の受療権を守ろう」と話し合ったことも報告されました。
 東京・石田美恵評議員は、コロナ禍で再認識した「人の力」について発言。第8波で感染した高齢者の特徴として、感染後に食思不振になり、家族によるケアも期待できず、「弱った体で冷え切った自宅に一人戻ることが、さらに生きていく気力を失わせている」と指摘。方針案第2章第2節の「人と人との関係性を重視し相手を思いやるのがケアの倫理」との表現を強調し、介護の専門家による「人の支援を手厚くできるような介護保険制度、社会保障制度であるべき」と訴えました。

医師の働き方改革への対応

 宮崎・高田慎吾評議員は、24年4月までに対応が求められる「医師の働き方改革」で、全勤務医に労働時間の上限が適用されることにともない、宮崎生協病院が近隣の医療機関と情報交換会を開いたり、請願署名にとりくんだことを報告しました。労働基準監督署にも事前に相談した上で書類を提出。実地調査や勤務医へのヒアリングなどを経て、宿日直が許可されました。
 全日本民医連・伊藤真弘副会長も、青森・健生病院の「医師の働き方改革」について発言しました。伊藤さんは「年間3000台の救急車を、スタッフ医師2~3人と研修医1~2人で受け入れているが、このままでは宿直許可はとれないとの労働基準監督署の判断で、対応を検討中」と報告。「宿直許可や健康確保措置の弾力的運用」による現状維持に近い形での対応ではなく、「医師数の増員を求める運動が必須」と語りました。

経営課題を見すえて

 長野・番場誉評議員は、長野中央病院のリポジショニングについて発言。昨年施行された改正医療法にもとづく外来機能報告により、外来機能による病院の分化が求められているため、同院は紹介受診重点医療機関への手上げを検討しています。しかし現状では救急患者や紹介患者を多く受け入れる一方で、かかりつけ患者の診療に力を注ぐ科も多いため、かかりつけを希望する患者や医療生協組合員の理解を得ることは難しく、「苦渋の選択を迫られる」と番場さん。共同組織への問題提起や学習、職員の意思統一などを始めています。
 大阪・穴井勉評議員は、近畿地協経営委員会の機能強化の試みを報告。かつては報告と交流が中心で、踏み込んだ議論をしてこなかった委員会でしたが、他の地協のとりくみに刺激を受け、(1)地協運営委員会が経営課題を位置づけて必要な体制も確保し、(2)地協内52法人の状況を継続的につかんで、(3)各県連経営委員会の機能強化をはかってきたことを語りました。

地域とともに

 沖縄・宮國迅評議員は、首里協働クリニックで行ったフードサポート活動の経験を報告しました。限られた予算や人員で行うため、対象者を絞り、職員と組合員がペアで自宅訪問する形で実施。訪問先では、貧困による受診抑制や薬の節約、食事回数を減らしているなど、深刻な実態が浮き彫りになりました。無料低額診療事業や生活保護の利用にもつながり、「アウトリーチの重要性を確認した」と発言しました。
 神奈川・星野俊平評議員は、職員と組合員で立ち上げた「不登校を考える親の会」について報告しました。
 会は月1回、不登校の子を持つ親が集まって、悩みなどを共有する定例会と、講師を招いての学習会を行っています。「参加することで、一人ではないと元気をもらった」との声も寄せられています。社会的処方として、小児科からの紹介もすすめています。会の活動が認められ、23年度からは市の助成金が出ることに決まりました。星野さんは、今後も地域の「困った」に応える活動をひろげる決意を語りました。

職員育成のとりくみ

 栃木・関口真紀評議員は、SDH(健康の社会的決定要因)の活動と学習を報告しました。
 栃木民医連は県連医療介護活動委員会のもと、電子カルテにSDHプロファイルを設定、初診時問診票の経済事情項目の導入、通院手段を聞こうキャンペーン、SDHゆるキャラグランプリ、子ども食堂、まちの保健室などにとりくんできました。一方、新型コロナウイルスの感染拡大後に入職した職員からは「SDHがよくわからない」との声も。そこで関口さんが講師となり、県連学運交でSDHについて講演すると、多くの積極的な感想が。関口さんは「SDHなど民医連の理念にかかわるテーマを重視し、人権意識を育む職員教育をすすめたい」と力を込めました。
 埼玉・宮岡啓介評議員は、熊谷生協ケアセンターが開いたレインボーフェスタについて報告しました。フェスタは多様性をテーマに行い、地域の子どもや高齢者に呼びかけ、約200人が参加。LGBTQ当事者の講演を通じて、多様性や個人の尊厳を身近に考える機会となったことから、職員の学習の必要性を強調。埼玉県アライチャレンジ登録企業制度に参加することも表明しました。
 石川・武田美香評議員は、全職員研修会(県連学運交)について報告。422人が参加し、戦争か平和か問われているいま、憲法9条の改憲を許さない運動をつくる必要性を学びました。
 当日は、明日の自由を守る若手弁護士の会の黒澤いつきさんを講師に学習講演。憲法9条を中心に、ジェンダーなど、若手職員にもわかりやすい学びの場になりました。

(民医連新聞 第1778号 2023年3月6日)