フォーカス 私たちの実践 考えてケアを実践 目標に向けサポート 新人看護師のリフレクション研修 京都民医連中央病院
京都民医連中央病院では、2021年度の新人看護師を受け入れるにあたり、自らの考えや行動をふり返るリフレクションを活用した研修を行ってきました。この演題は第15回看護介護活動研究交流集会で「心に響いたで賞」を受賞しました。寺内桃子さん(看護師)が報告しました。
2021年度、当院には31人の新人看護師が入職。40%強が民医連のA看護学校の卒業生です。実地指導者がマンツーマンで担当し、部署の教育委員、師長もいっしょにフォローする屋根瓦方式の教育体制をとっています。
2020年度はコロナ禍で看護学生の臨地実習が中止となり、再開後もコミュニケーションは15分以内、バイタルサイン測定以外は見学に。見学やシミュレーションによる実習では、学生自身が意図的なケアを考える機会は減少しました。そのため、リフレクションを取り入れることにしました。
■組織的な実践
まず、看護部教育委員会でリフレクションの導入を提案し、オリエンテーションを実施。A看護学校の懇談会の内容を共有し、実施する目的・方法を確認。部署での説明内容に差が出ないよう、音声付PPTや、全部署共通のリフレクションシートも作成しました。
二つ目に、教育委員が各部署でリフレクションの導入オリエンテーションを実施しました。
三つ目に、看護部教育委員会や実地指導者会議で、部署でのリフレクションの進捗(しんちょく)について確認しました。実地指導者会議は1年間かけて学習を行いました。3~4月、リフレクションの目的や方法などの学習が部署ですすめられました。部署配属後は、日勤の終了後にリフレクションを実施。7月中にほとんどの新人が夜勤自立を果たし、予定通り終了しました。10月以降は部署で実施したリフレクションで悩んだ事例を、実施指導者会議でふり返りました。
四つ目は新人看護師が夜勤自立するまで、勤務終了後にパートナー看護師とリフレクションを実施しました。新人3人のリフレクションシートの記録を見返したところ、リフレクションの内容は、技術や知識の未熟さにより適切に看護提供できなかったこと、患者の痛みや不安などの反応に対する悩み、多重業務の対応への葛藤などが多くありました。新人が、(1)リフレクション場面の内容、(2)その時の思い・考えを記載した後、パートナー看護師がコーチングスキルを使い発問しながらふり返りました。
五つ目に新人看護師は実践課題として、看護実践のふり返りのレポートにとりくみました。自身のケア実践を1つ取り上げ、実地指導者や部署スタッフとディスカッションし、レポートにまとめました。7月まで実施していた業務後のリフレクションは「レポートをまとめる際に役に立った」と、90%以上が回答しました(図)。
六つ目に新人看護師、実地指導者、部署の教育委員へのアンケートで効果を確認しました。96%が「リフレクションは教育方法としてよかったと思う」「少し思う」と回答。理由として、「新人の思いや考えを知ることができた」「客観的にふり返ることで課題が明確になった」などがあげられました。気づきを引き出す発問などの支援については、「少しできた」が75%と最多でした。
■自分を知ること
入職時から4カ月間実施してきたリフレクションは、自らの看護をふり返る課題レポートに役立ち、レポートをまとめることで自己の課題の明確化や成長、「考えてケアをする」ことにつながったと考えます。リフレクションは自己の行動や思考のふり返りであり、「自分を知ること」「気づきと概念化」が重要です。off-jt (※)研修でその機会が多くあり、臨地実習の経験が少ない新人看護師が、看護実践について考える手段として効果があったと考えます。
2021年度の看護部目標である「考えてケアを実践する」ために、リフレクションをすることは効果がありました。リフレクションの質を担保するためには、日常的に継続して実施できるようなマネジメントや、ファシリテーターの力量を向上させるための継続学習が必要であると考えます。
※日常の仕事を通じて教育を行うOJTに対し、職場や通常の業務から離れ、特別に時間や場所を取って行う教育・学習。
(民医連新聞 第1778号 2023年3月6日)