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民医連新聞

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副作用モニター情報〈590〉 カルボシステインによる皮膚と粘膜への障害

 前号でカルボシステインによる皮膚障害の原因として、カルボシステインの代謝物のひとつで、夜間に代謝された場合に生成する2,2′-チオジグリコール酸(以下、TDGA)が有力と紹介しました。実は、このチオジグリコール酸はマスタードガスの分解生成物で、皮膚毒であり、暴露するとやけどのような症状を引き起こすことを、PubChem(化学分子データベースの一つ)を調べてようやく知った次第です。体内で発生した場合に、皮膚や粘膜に障害を引き起こしても、何ら不思議はありません。
 そこで、当モニターに寄せられた症例を全例調査し、TDGAに起因するかもしれない皮膚障害がどの程度あったのかを検証してみることにしました。
 2022年7月までに当モニターに寄せられた、カルボシステインが被疑薬とされた皮膚病変症例127例から、他の薬剤によると思われるなどの症例を除いた119例が候補となりました。年齢と性別について今回は割愛しますが、内訳は1回投与量250mg30例、500mg79例、その他不明10例。発症日は、1日目22例、2日目44例、3日目20例、4日目8例、不明を含む5日目以降25例は、日ごとに減少し、すべて5例以下でした。発症時間帯が記載されている症例は、夕~夕食で10例、夜間~朝で26例、昼5例、時刻に無関係で服用直後6例でした。DLST(薬剤誘発性リンパ球刺激試験)陽性3例、陰性1例、以前の服用時に同様の症状があったのが18例でした。全身を含む2カ所以上に発症したケースがほとんどで、特徴的なケースでは口唇浮腫4例、入浴中の発症2例がありました。
 TDGAが夕方から朝方にかけて生成すること、毒性発現に至るまでの蓄積、などの条件を勘案し、疑いの高い症例を抽出したところ、36例(30.2%)にのぼりました。発症時刻の記載のない症例についてはカウントしなかったこと、薬物代謝は個人差もあることから、実際はもっと多いのかもしれません。
 また、以前にも同様の症状があったにもかかわらず、再投与されているケースが18例もあったのは着目すべき点で、急性疾患に用いられること、同時に処方される薬剤が多いこと、も背景にあると思われます。
 「服用開始3日以内で夕から朝にかけて発症、悪化した皮膚症状はカルボシステインの夜間代謝物による可能性がある」という視点で見てみると、副作用疑い症例に遭遇したときに「朝と昼だけ服用してみましょう」と説明するなど、違ったアプローチが生まれます。
 筆者も大いに学習した症例でした。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1778号 2023年3月6日)

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