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民医連新聞

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診察室から リンパ腫ミミックと他科連携

 昨年の春に当院に戻り、血液内科専門外来に新たに一枠を設けてもらい、外来診療を始めました。リンパ腫診療をがんばるぞ、と意気込んで外来を始めたわけですが、最初の紹介例は思わぬところからヒントがもたらされました。
 リンパ節生検を外科に依頼したところ、術前の梅毒検査で陽性だと連絡があったのです。そういえば、他院処方の抗菌薬で若干リンパ節が小さくなった、との患者談を思い出しました。定量検査を行うと見事に著増していました。接触歴も話してくれて、梅毒で確定しました。今ならステイルズ筋注単回で済みますが、まだ採用前でしたので、総合診療科に相談し、10年ほど前に国立国際医療研究センター感染症内科が国際誌に発表していた治療法を用いました。
 ある時は全身のリンパ節がゴロゴロと腫れた患者が受診。緩徐進行の濾胞(ろほう)性リンパ腫であろうと見込みました。しかし、リンパ節生検の直後、病理科から腺がんの速報が来ました。私はどうみても悪性リンパ腫であると言い張りましたが、病理医は腺がんで間違いなしと言います。男性の腺がんで消化器系腫瘍マーカーは陰性。試しにPSA(前立腺特異抗原)を測ってみると著増しており、前立腺がんでした。ステージ4から内分泌療法で見事に回復しました。
 他にも結核性リンパ節炎、菊池病、伝染性単核球症、甲状腺濾胞腺腫、TAFRO症候群…。外来で出会うリンパ腫ミミック(疑似)は無数にあり、他科連携なくして診療は成り立ちません。リンパ腫は抗がん剤が効きやすく、スムーズに治療がすすむ症例も多いのですが、なかにはICU(集中治療室)の助けを必要とし、長期入院となる症例もあります。
 困難な症例に直面した時、病棟の多職種カンファレンスを重ねることで方針が見えてきます。駆け出しの血液内科医である私は、指導医や他科、多職種にたくさん助けられています。他科・多職種連携のしやすさは当院の強み。感謝の日々です。本年もチーム一丸となってすすんでいきます。(原田知弥、北海道・勤医協中央病院)

(民医連新聞 第1778号 2023年3月6日)