にじのかけはし 第22回 民医連での経験とこれから 文:吉田絵理子
今回は「無差別・平等の医療と福祉の実現をめざす」民医連で、私が経験してきたことをお伝えします。2007年に川崎協同病院に入職し、途中2年間の外部研修に出ましたが、14年間民医連で働いてきました。入職した当時は、職員や先輩たちの言動から「無差別・平等」のなかにLGBTの人は含まれていないと感じ、「女性のパートナーがいるのがばれたらまずい」という怖さを抱えて働いていました。
2018年、LGBTに関する活動を公に行いたいという思いから、職場の年納め会でのカミングアウトを決心しました。職員が一堂に集まりお酒を飲んでいた場で、突如マイクを握り、「みなさんにお伝えしたいことがあります。私には女性のパートナーがいます」と宣言しました。ざわざわしていた会場が、文字通り水を打ったように静かになりました。私の手は震え、声は裏返っていました。宣言の後、隣に座った検査科のベテランスタッフが、「これで吉田先生が職場で差別にあうような病院だったら、私辞めてやるわ。大丈夫よ、先生、応援してる」と声をかけてくれました。こういう職場だから、私はLGBTの活動をやっても大丈夫だと思えたんだなと感じながら、肩の重い重い荷物をやっと下ろせたような気持ちで帰りました。
その後、各地の民医連から講師を依頼される機会が増え、講演のたびに真剣に受け止められていると感じています。そしてこの連載が始まり、全国からお便りが届き、今、民医連は大きく変わりつつあると感じます。カミングアウトした時の「民医連ならきっと大丈夫」という気持ちは、間違っていませんでした。
2023年、いよいよ全日本民医連の人権と倫理センターに「SOGIコミュニティ」が立ち上がります! SOGIとは性的指向・性自認を表す言葉で、「LGBTの人だけでなくすべての人が当事者である」という意味が込められた名前です。まずはLGBTの人びとのケアに関心のある職員が気負わずに集まり、対話し、意見交換できる場づくりをめざします。関心があるけど何から始めていいかわからない人、職場では孤独を感じる人、すでに実践をしている人、みんなでつながって、無差別・平等の医療と福祉をいっしょにめざしませんか?
よしだえりこ:神奈川・川崎協同病院の医師。1979年生まれ。LGBTの当事者として、医療・福祉の現場で啓発活動をしている。
(民医連新聞 第1778号 2023年3月6日)