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民医連新聞

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相談室日誌 連載534 生活保護利用で身寄りなし 公的、医療機関連携で対応(静岡)

 Aさんは、有料老人ホームに入居していた生活保護利用の身寄りなしの80代女性です。既往に認知症や高血圧などがあり、当院が訪問診療で管理していましたが、誤嚥(ごえん)性肺炎で当院に入院しました。誤嚥性肺炎は軽快し、入居していた施設へいったんは退院しましたが、退院後から食事がとれなくなり、食思不振で再入院しました。
 再入院後、言語聴覚士が介入し、嚥下(えんげ)評価を実施しましたが、嚥下機能障害や認知機能の低下で、経口摂取のみでの栄養管理は難しいという結果に。本来であればこの時点で、本人や家族に現在の状況を説明し、今後の代替栄養の希望や方向性などを検討してもらうところですが、本人の意思決定も認知症の症状から難しい状況でした。各関係者と相談・検討し、院内でかかわった主治医、看護師、言語聴覚士、SWと施設関係者、生活保護担当者で、関係者会議を開きました。「身寄りがない人の入院および医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドラインに基づく事例集」の「臨床倫理の観点からの検討」を用いて検討。本人の利益やこれまでの生活、侵襲性などから、中心静脈栄養管理にて療養型の医療機関へ転院になりました。
 生活保護担当者と相談し、療養型の医療機関の選定をしましたが、生活保護を利用する身寄りがない人を受け入れる医療機関はほとんどありませんでした。理由は書類の記入や急変時の対応、支払い方法などの手続きをできる家族がいないからというもの。書類の記入は代筆、支払いは引き落とし、急変時は生活保護担当者が対応する、という条件で受けてくれる医療機関が見つかり、Aさんは転院できました。
 厚生労働省の調査では、昨年3月現在で生活保護利用者は約204万人いると推計されています。また未婚率の増加や単身世帯の増加、少子化などもすすんでおり、今後身寄りなしの人や生活保護利用で身寄りがない人が多くなると思われます。そうなると、家族が対応していた手続きなどを、医療機関や公的機関が対応しなければいけない状況が予想できます。これまで以上に医療機関や公的機関の役割が重要となるため、関係機関との連携を大切に、柔軟に対応していきたいと思います。

(民医連新聞 第1777号 2023年2月20日)