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民医連新聞

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私がここにいるワケ 患者・利用者の“食べる”を ささえる 愛知・名南ふれあい病院 栄養科調理師 大木 直矢さん

 民医連で働く多職種のみなさんに、その思いを聞くシリーズ4回目は、病院や施設で毎日の食事をつくる、愛知・名南ふれあい病院の調理師、大木(おおぎ)直矢さんです。(稲原真一記者)

 名南ふれあい病院は、回復期リハビリテーションの入院施設と介護老人保健施設が併設する複合施設です。そこで毎日180~200人以上の食事をつくっているのが、大木さんの働く栄養科です。職員は調理師7人、栄養士5人、補助のパート職員14人です。
 大木さんは調理師専門学校を卒業後、市中病院に就職するも、程なくして病院給食が委託に変わり退職。飲食業で働いていたところ、前職の先輩から誘われ、民医連に入職し、現在16年目です。

■多職種連携が魅力

 「民医連で驚いたのは、職種間の壁がとても低いこと」と大木さん。他職種から調理師としての視点が求められ、病院や施設全体の食事について検討する摂食会議やターミナルカンファレンスなどにも参加。職員がお互いを尊重しながら、仕事ができていると感じています。また共同組織との地域活動は、職員の団結にもつながっていると言います。
 仕事では、外に出ることを大切にしているという大木さん。早い時は朝6時出勤、遅い時は20時まで勤務という変則的な職場で、以前は外に出ることも少なかったそうです。しかし、同病院では10年ほど前から、調理師の提案で病棟や施設での食事の様子を、調理師が見に行くようになりました。「患者や利用者、他の職員とのやりとりを通じて、より良い調理方法や食事形態などを考えるのが楽しくなった」とふり返ります。直接食事の感想を聞けることは、やりがいにもつながっています。

■求められる食事を追求

 近年、嚥下(えんげ)食が普及しはじめ、病院調理師の専門分野として注目されています。大木さんは専門家の集まる「東海嚥下食研究会」に参加し、講演活動などにかかわってきました。その経験も生かし、終末期で経管栄養になっている人に「最後にどうしても食べたい」と言われた食事を嚥下食で提供することも。「それまで無表情だった人が、自分のつくった食事を食べて泣いたり笑ったりしてくれる。誰かの人生最後の食事をつくる、こんなやりがいは他にない」と病院調理師の魅力を語ります。
 希望があれば、病院から在宅に戻る患者の家族に、家での調理法を個別指導しています。料理の経験のない家族がケアを担うことも増えていて、買い物のしかたや、市販の弁当を食べやすく調理し直す方法なども指導しています。

■やりがいと専門性を伝え

 この間の物価高騰は、栄養科にも大きな影響があります。「食品の値上げで使える食材がどんどん減っている」と危機感を持つ大木さん。入院食事療養費は約30年間変わらず、費用が上がれば病院経営を圧迫することになり、委託が増える理由でもあります。「直営の給食だからこそ、個人に合わせた細かな対応ができる。病院の食事は治療の一部。それを保障する制度にしてほしい」と訴えます。
 大木さんは今後の目標の一つとして、職員教育をあげます。コロナ禍で民医連らしい活動がストップし、新入職員には専門性や、やりがいを十分に伝えられませんでした。病棟での会議や老健施設でのブリの解体ショー、社保の財政活動でのカレー販売など、徐々に再開している活動には新人を積極的に連れ出しています。
 個人としても「病院調理師としての専門性を磨き、医療安全などにも力を入れて、できることの幅をひろげたい」と、熱意をもってとりくんでいます。

(民医連新聞 第1777号 2023年2月20日)