第2回評議員会方針(案)のポイント 全日本民医連事務局長・岸本啓介さんに聞く 存在意義に確信持ち平和とくらしの 危機に立ち向かおう
2月18~19日、全日本民医連第45期第2回評議員会を行います。評議員会方針(案)のポイントを全日本民医連事務局長・岸本啓介さんに聞きました。
(多田重正記者)
急展開する「戦争する国づくり」
第45回総会(昨年2月)以降の1年間で、情勢は急展開しています。とくに平和をめぐる変化は大きく、ロシアのウクライナ侵攻を機に日本では「敵基地攻撃能力」(反撃能力)の保有、改憲、大軍拡の動きが加速しています。
昨年12月には岸田内閣が国会で審議もしていないのに、5年間で43兆円(現行の1・6倍)もの「防衛力整備計画」を閣議決定しました。この計画遂行のために新設される「防衛力強化資金」(3兆3806億円)には、国立病院の積立金や新型コロナ対策資金まで流用されます。
さらに来年度(2023年度)予算案では、自衛隊の艦船建造や施設建設などに建設国債をあてます。国債は、かつて日本が戦費調達のために乱発し、侵略戦争に突きすすんだ反省から、戦後、原則禁止とされたものです。
予算案には、敵基地攻撃能力を持つため、核弾頭を搭載できるミサイル「トマホーク」の購入費用も入っています。戦争法(安保法制)のもとで、岸田政権はいよいよ、戦争の実行段階に突きすすもうとしています。憲法9条のもとで、許されない事態が進行しています。
大軍拡と社会保障充実は両立しない
一方で岸田政権は、今後ますます重要となる社会保障の財源について、ほとんど何も示せない異常事態にあります。全世代型社会保障構築会議の報告書(昨年12月。本部長は首相)では唯一、出産一時金を50万円に引き上げる財源について、後期高齢者医療制度から一部支援する仕組みを導入すべき、としているだけです。大軍拡をすれば、社会保障の削減や大増税につながることは必至です。軍事大国化と社会保障の充実は両立しません。
また、社会保障を論じる上では、コロナ禍の総括が欠かせません。コロナ禍で貧困が拡大し、入院できない患者が在宅や施設に留め置かれるなど、事実上の医療崩壊が多発しています。社会保障を受ける権利を「自己責任」に変質させ、社会保障の解体や憲法25条の実質的な改憲をすすめてきた結果が、これらの深刻な事態につながっています。医療・介護にかかわる専門職全体の増員や、医療提供体制の確保なども重要です。
コロナ後も視野に入れた諸活動の前進を
あわせて民医連は、コロナ後も視野に入れて、どのような医療・介護活動を展開していくのか、みんなで学び合い、考え、準備していく必要があります。患者の受療権を守るために、どんなことを実践・整備していくのか。医師の働き方改革や、経営構造、医療・介護・歯科の連携、職員の確保と育成をはかることも重要です。
今回の評議員会方針では、障害者やLGBTQ、高齢者や認知症患者と家族、外国人など、社会経済的に困難を抱える人たちにとって、私たちの事業所が人権の砦(とりで)となり得ているのか、点検していくことも呼びかけています。全日本民医連「旧優生保護法下における強制不妊手術問題に対する見解」(昨年2月)でも明らかにしたように、平和・人権を守るためにがんばっている私たち自身も常に学び点検し、人権感覚を国際水準に合わせることが大切です。
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民医連は今年、結成70周年を迎えます。「人びとの苦難あるところ民医連あり」「たたかいあるところ民医連あり」という組織文化を実践を通じて育み、貫いてきた不屈の歴史です。民医連の存在意義に確信を持ち、平和とくらしの危機に立ち向かいましょう。
(民医連新聞 第1776号 2023年2月6日)