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民医連新聞

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いのちや健康に格差があってはならない 国として子ども医療費を無料に

 子ども医療費の窓口負担助成は、全国で行われています。しかし、自治体の制度のため、「窓口負担なし」(現物給付)の自治体もあれば、助成額に上限のあるところも。対象年齢もバラバラです。全日本民医連も参加する「子ども医療費無料化制度を国に求める全国ネットワーク」は、「18歳となった年の年度末まで、国の制度として医療費の窓口負担を無料にせよ」と求め、運動しています。なぜ国の制度で、無料でなければならないのか。京都市と沖縄県の制度から考えます。(多田重正記者)

3歳から1500円まで自己負担 京都市

 「京都市では3歳になると、通院でひと月1500円まで取られるんですよ!」()と教えてくれたのは、4歳の子どもを育てている山田沙希さん(京都民医連・事務)。別の医療機関にかかれば、そこでもひと月1500円まで払うことになります。窓口負担の合計が1500円を超えた部分は、申請すれば市から払い戻されますが(償還払い)、保育園や学童の送り迎え、食事、着替え、入浴の世話、宿題の面倒など「子育てに追われているのに、申請書を出すのはたいへん」と保護者には不評です。
 「子どもはみんなアレルギーがあり、皮膚科や耳鼻科に通院している」と話すのは、5~13歳まで3人の子どもがいる川端診療所(京都市)の林聡子さん(事務)です。「部活を始めた長男はよくけがをするので、整形外科も月1回は受診します。子育てでいろんなことに手を取られるのに、領収書は束になるし、申請しないと返ってこない制度は不親切」と言います。
 京都民医連常駐理事の豊田明子さん(事務)も小学3年生と中学1年生の子どもがいます。「区役所で償還払いの申請をしましたが、窓口の職員もたいへんそうでした。そんなに手間やったら、償還払いの経費もかかるやろうし、窓口負担をタダにした方がいいんちゃうかな」と豊田さん。

■院外薬局でも負担が

 同市では3歳から院外薬局でも1500円までの窓口負担が発生。「処方せんを発行した医療機関ごとに1500円まで」となっているため、「わかりにくい制度で、保護者とトラブルになることもあった」と、佐藤優太さん(京都民医連・事務。0歳と3歳の子育て中)は、調剤薬局に勤めていたときの経験を話します。
 3人の子育てに奮闘中の川端診療所・川西瞳さん(看護師)は「市長は『子育て日本一』なんて言うてるが、ウソばっかり」。小学5年生と2年生2人の親の京都民主医療機関労働組合の塚眞実さんも「償還払いで受診を控える人は絶対いる」と指摘します。

運動の力で中学卒業まで窓口負担無料に 沖縄県

 数百円程度の自己負担をとる自治体は珍しくありません。しかし「貧困世帯にとって、その数百円が重い」と話すのは、沖縄県社会保障推進協議会事務局長の高崎大史さん(沖縄民医連・事務)です。県民医連が行っているフードサポートでも「これで子どもにご飯を食べさせられる」と安(あん)堵(ど)する保護者の姿が報告されています。償還払いも「立て替えるお金がないこと自体が、親にとっては屈辱。窓口負担は無料にしなければ」と高崎さんは言います。
 県が実施した「子どもの貧困実態調査」(2016年)では、子どもの貧困率が29・9%と、全国(16・3%)の2倍。県保険医協会の歯科検診の調査でも小中学校で「口腔崩壊の子どもがいる」は42・7%で、「要受診だったのに受診していない」児童・生徒は71・9%におよびました。
 「当時、県内では、都市部の医療費助成が就学前まででした。小学校に上がった途端に3割負担となり、これがハードルとなっていた」と高崎さん。
 県社保協は2018年から、「子ども医療費無料制度を広げる県民の会」発足を呼びかけ、県として中学校卒業まで医療費を無料化するよう求める大運動を開始。2022年4月、全市町村で中学校3年生までの窓口負担無料化が実現しました。

■立場をこえて賛同ひろがる

 無料化への道のりは平坦ではなく、当初、対象を非課税世帯とする案や「2025年までに段階的に中学校卒業まで拡大」する案が提示されました。その後、「会」の運動や市町村の要望と知事の決断もあり、2020年11月、県は「2022年までに中学卒業まで拡充」の方針を発表したのです。ただし、この時点でもまだ償還払いの案でした。
 背景には、財政問題が。子どもの医療費を窓口無料にした場合、国民健康保険に対する交付金を減らす国のペナルティーがあるからです。
 そこで「会」は2021年より、国に18歳までの医療費無料化を制度化することや、ペナルティー廃止を求めるアピールを発表し、賛同を募集。多くの保守系市長も賛同するなど、すでに県内41市町村中21の首長が賛同しています。これらの運動を背景に、県や市町村の尽力の結果、県がペナルティーの半額を負担することで、窓口無料化が実現しました。
 沖縄では、すでに中学卒業間際の駆け込み受診が歯科で確認されるなど、高校生の受診抑制と思われる事例が報告されています。住む地域によって、いのちや健康に格差があってはなりません。高崎さんは「自治体の努力にこたえ、国が18歳までの医療費無料化を実現すべきです」と強調しました。

(民医連新聞 第1775号 2023年1月23日)