診察室から 未来の患者を救う手がかり
香川県にある高松平和病院で初期研修をしています。
先日、当院でCPCが開催され上級医の協力のもと、対象となる患者Aさんの臨床経過について整理し、発表しました。CPCとは臨床病理検討会のことで、患者の死後に病理解剖を実施し、それをもとに臨床医と病理医の間で情報の“すりあわせ”をすることで、診断・治療の妥当性などを吟味するものです。
Aさんは、当院緩和ケア病棟に入院していた患者です。詳細は伏せますが、臨床経過の整理の過程で、治療にかかわった先生たちから紹介状という形で情報を教えてもらい、時には直接話を聞かせてもらうことで、現疾患について多くの知識を得ることができました。特に当日は、病理解剖の結果やその周辺知識について、病理の先生から学び、亡くなる前にはわからなかった病態や疾患を発見することができ、非常に含蓄のあるCPCになったと思っています。
そもそも、今回の病理解剖・CPCは、Aさん本人の「誰かの役に立ちたい」という意思にもとづくものでした。本当にその意思がかなえられたかはわかりませんが、少なくとも私自身にとっては、病理解剖に立ち会うことができた上に、今まで知らなかったような病態について学ぶこともできました。今後の医師人生において大きな糧となったと感じています。また、病理解剖・CPCの準備にかかわらなかった人にとっても、これらの内容を聞いたり読んだりすることによって、新たな知見を得ることができると思います。このCPCから得られた知識を我われ医療従事者が生かすことで、いまだ出会ってすらいない、未来の患者を救う手がかりの一つとなる可能性も秘めていると考えています。
まだまだ病理解剖には抵抗感のある患者、医療従事者が多いとは思いますが、死後の選択肢のひとつとして患者さんに提案するのも、医師をはじめとした医療従事者の責務なのかもしれないと感じました。(伊藤翔吾、香川・高松平和病院、初期研修医1年目)
(民医連新聞 第1775号 2023年1月23日)
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