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民医連新聞

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2023年新春 民医連結成70th 「戦争はいけん」の重み語り継ぎ、つなぐには 福岡・親仁会 平和アクションプラン推進委員会

 今年6月7日、全日本民医連は結成70年を迎えます。大軍拡がねらわれる今、医療・介護の現場から、いのちと健康を破壊する一切の戦争政策に反対してきた民医連は、何ができるのか―。福岡・親仁会(大牟田市)では、ある入院患者との出会いをきっかけに、青年職員らが業務の傍ら、1年半がかりで地域の戦争体験を語り継ぐ動画をつくりあげました。(丸山いぶき記者)

 昨年7月に完成した動画は、全5編、計35分。3度の大牟田空襲を経験した永田靖惠さんの「世界どこででも、戦争だけはしてはいけない」という訴えが胸に迫る内容です。11月24日には米の山病院で初の上映会が行われ、職員23人が参加。YouTube動画(※)の累計視聴回数は、限定公開ながら300回を超えます。
 作成したのは、福岡・親仁会の青年職員(現在、11人)で構成される、平和アクションプラン推進委員会(以下、委員会)。きっかけは、2021年2月、米の山病院に入院していた永田さんと、委員の一人で同院の言語聴覚士、深浦裕理さんとの出会いでした。

人生の最期まで

 リハビリを通して、永田さんが大牟田空襲の語り部をしていたと知った深浦さん。「コロナ禍でも平和の火を絶やさないためには?」と模索していた委員会で話題にすると、「地域の戦争体験者から体験を聞き取り、記録して語り継ごう」「動画をつくろう」と、活動目標が見えてきました。
 その思いに、永田さんも快く応じてくれました。ただ、長く話すと息切れし、大きな声を出すことも難しい状態。呼吸法や声を張る練習、持久力をつける運動リハビリに意欲的にとりくむ姿があり、「語りたい、という気持ちが、リハビリや退院へのモチベーションになっていた」と深浦さん。
 しかし21年5月、永田さんは病状が悪化し、亡くなりました。亡くなる少し前にも、「あれ、撮り直さんといけんもんね」と、約束していたビデオ撮影のことを、覚えてくれていたといいます。

思いを引き継ぎ

 動画は、リハビリ時に仮録音していた音声記録をもとにすることに。ノウハウも大牟田空襲の知識もほとんどなかった委員たちが、音声を何度も聞き、分担して文字起こしを行い、言葉の意味や漢字、戦時中独特の表現を調べました。月1回の委員会に加え、日々SNSのグループチャットで意見を交換。話に出てきた地名にはフィールドワークへ。地域の「大牟田の空襲を記録する会」の協力で、当時の写真や資料を集め、付属資料もまとめました。
 委員会の事務局長の井島輝さん(法人本部・事務)は、「少し年齢が違うだけでも、実は知っている地域の風景が異なることにも気づけた」と話します。
 一方、動画ではあえて、集めた写真や映像、効果音などを多用していません。「やっぱり何より、引き込まれるような永田さんの語りを聞いてほしい」。1年半がかりの試行錯誤の末にたどり着いた、委員たちの総意でした。

* * *

 完成した動画を見た、永田さんの家族は涙ぐみ、喜んでくれました。「最期まで、自分の戦争体験と戦争反対の思いを伝え続けたいと語っていた母の声を、形にしてくれてありがとう」と。
 「戦争はいけん。その思いを、体験者の誰もが永田さんみたいにうまく語れるわけではない。それでも伝えなきゃ、という強い思いがあって、私たちに話してくれる。この医療や介護の現場で」と深浦さん。後に続く人たちに期待しながらも、「この動画を越えなきゃいけないハードルのようには思ってほしくない」と苦笑い。
 委員会は発足から18年目。自由な発想で、みんなで「平和っていいなぁ」と思える活動をめざして、楽しく活動を続けています。
※視聴のお問い合わせは親仁会へ

(民医連新聞 第1774号 2023年1月2日)