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民医連新聞

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第15回 看護介護活動研究交流集会 オンライン開催 Ⅰ.感染管理 Ⅱ.身体拘束 Ⅲ.多職種連携 Ⅳ.心理的安全性など 4つのテーマで学びを深めるテーマ別セッション

 看護介護活動研究交流集会で行われたテーマ別セッションの概要を紹介します。

セッションⅠ パンデミックに挑み奮闘した経験を共有

 セッションIは「感染管理の先にある光」がテーマ。全日本民医連理事の坂田薫さんが、6人のICN(感染看護認定看護師等)へのグループインタビューから語りを抽出・分類し、実践とその背景にある組織文化との関連を分析し、考察した結果を発表しました。「感染対策で意識すべき『軸とバランス』の土台に、民医連の理念と組織文化が大きく影響している」とまとめました。
 指定演題は、在宅医療の看護マネジメント(京都)、高齢者施設クラスター時のICNの役割(兵庫)、県の社会福祉施設感染症対策チームでの活動(福井)の3本。
 シンポジウムには組織内外で活躍する3人のICN・黒田由紀子さん(京都)、河田宏治さん(沖縄)、残間由美子さん(宮城)と、看護管理者の立場から折出洋子さん(北海道、看護師)、介護管理者から藤岡裕子さん(兵庫、事務)、病院長から松原為人さん(京都、医師)が参加。標準予防策の徹底や医療・介護、多職種連携など、「日々のありよう」「平時」の重要性が語られました。残間さんは、事前に感染症対策の研修(訪問助言)をした高齢者施設では、クラスターが発生しても支援期間が半分ですんだ経験を紹介。藤岡さんは、正しい対策を取って従来のケアを再開し、「介護も声をあげよう」と自治体交渉をしたことにもふれました。松原さんは「管理部が職員を守ること、ここぞと出張るのではなく、ICT(感染対策チーム)の専門家たちの力量が生かされる援助が大事」と強調。経営と感染管理のコンフリクト(衝突・葛藤)を生まないマネジメントも話題になりました。
 全日本民医連副会長の山田秀樹さんが講評。「たいへん勉強になった。民医連職員として地域で専門性を発揮したICN、リスクマネジメントと組織運営のあり方の深化も感じた。学習と実践を通じて、より良い組織文化へと、私たち職員一人ひとりの意識が向上することと、今回の報告が、第8波の対応方針に生かされることに期待したい」とのべました。

セッションⅡ その人らしくいられる医療・介護をめざして

 セッションIIでは「その人の最善に向けて~身体拘束を考える~」と題して、医療・介護現場での倫理問題を学習、交流しました。
 前半は認知症介護研究・研修東京センター所長の山口晴保さん(医師)が「認知症の人の自立・自律を支援するケア」について教育講演。山口さんは、日本では本人が拒否しても服薬や食事が強制され、転倒すれば施設の責任となるため身体拘束されるなど、人権侵害が行われていると指摘します。一方で北欧では、たとえ認知症でも本人の同意がなければどんなケアも行わず、転倒しても患者・利用者の責任となるかわりに、移動の自由が保障されて身体機能も維持されるなど、個人の権利を優先する考え方があると紹介しました。
 認知症のケアは欠点や困難を取り除くだけでなく、長所を伸ばすポジティブケアが必要だといいます。日常動作のどのステップでつまずいているか分析し、あきらめずに工夫することや、役割をもって生活を送ってもらうことの重要性を強調。「認知症を否定せず、本人や家族が受容することが幸せにつながる」と結びました。
 後半は参加者からの指定報告。京都民医連中央病院の長谷川美智子さん(看護師)は、急性期病院の精神科リエゾンチームで、認知症患者の行動や問題を時間ごとに記録し、個別カンファレンスで身体拘束を減らしたとりくみを報告。続いて山形・介護老人保健施設かけはしの神田大輔さん(事務)は、センサーも身体拘束と考え、PDCAサイクルの実践で、センサー使用ゼロをめざしたとりくみを報告しました。
 全日本民医連副会長の加賀美理帆さん(医師)が、「憲法と人権の視点で、この問題を考えることは民医連としても必要。患者、利用者の視点に立つ基本が大切だと思えた。自分もここでケアを受けたいと思える職場をめざし、がんばりたい」と総括しました。
 参加者や演者との交流では、安全管理や患者・利用者、家族との間での葛藤などが語られました。

セッションⅢ 多職種連携チーム動かすことで能力発揮

 セッションIIIでは「多職種連携のこれから」をテーマに、学習と実践の交流を行いました。
 最初に、甲南女子大学教授の松岡千代さんが「多職種連携実践のエッセンス」をテーマに記念講演。「うまくいかないのは職種がちがうこと? 職種の前に個性など、人の違いでコミュニケーションにつまずいていませんか?」と問いかけました。
 多職種連携の実践で、よいコミュニケーションの三原則は、(1)内面の会話を閉じて聴く「傾聴」、(2)相手が何を考えているのか積極的に知ろうとする「訪ねる」、(3)自分の職種でなぜそう思うのかを言う「自分の考えをしっかり伝える」と紹介。チームの発展段階でコンフリクト(衝突・葛藤)が発生するが、発生してあたりまえで、マネジメントが必要であることや、みんなが同じように考える必要はない、個性・専門性の違いに価値を置く、多様性を活用することが重要だと指摘しました。コンフリクトを嫌がらず、オープンにする、コンフリクトの発生をチャンスと思う、多職種連携の変革に活用する、人と問題を切り離すことが必要とのべました。
 また話し合いの場でのリーダーの役割は、(1)自由に意見を言える雰囲気づくり、(2)意見をわかりやすく言い換え、理解を促進する、(3)注意事項の確認や重要事項のまとめが重要、と指摘しました。個性・専門性の違いに価値をおく多様性を活用することも強調しました。
 後半は参加者からの指定報告を行いました。北海道・勤医協札幌病院の元井里菜さん(看護師)が「SVSシート導入により、継続看護につながった事例から学んだ外来看護師の役割」、山梨・共立介護福祉センターいけだの中村弥生さん(看護師)が「複合型センターの優位性~定期巡回・訪問看護・看多機協働によるA氏の看取り~」、香川・介護支援センター協同の徳住君代さん(介護福祉士)が「新型コロナウイルス禍における退院支援に」ついて、報告しました。
 全日本民医連副会長の伊藤真弘さん(医師)が、講評。「多職種連携は相手の違いを知ること。自分が引っ張るのではなく、チームを動かし、パフォーマンスをあげていくことが重要だと感じた。感染管理についても、施設内にとどまらず、患者・利用者にどのような介入ができるのかという視点が必要」とのべました。

セッションⅣ 職場づくりにおける心理的安全性を考える

 セッションIVは「多様性を認め合い心理的安全性が保てる職場づくりをめざそう」がテーマ。はじめに中部学院大学兼任講師で、臨床心理士・公認心理師の西川絹恵さんが教育講演を行いました。
 西川さんは冒頭で、職場の人間関係が大きなストレス源で、そのストレスは「わかりあえない」ことが大きな理由と指摘。そして心理的安全性は「チームのメンバーの一人ひとりが、チームに対して気兼ねなく発言できる、本来の自分を安心してさらけ出せる、と感じられるような状態や雰囲気」と解説。心理的安全性が高い職場は、(1)職員一人ひとりのやる気や責任感が高まる、(2)前向きな挑戦により、新しい価値観や改善が生まれやすい、(3)多様な価値観が認められるため、話し合いが深まりやすくなる、という特長があること、逆に「うちの職場は、昔からこうだから」などと、さまざまな意見を排除すると話し合いがすすまず、心理的安全性を損なう、ことなどをのべました。
 また米・エドモンソン教授の心理的安全性と責任感の相関関係図(下)も示し、心理的安全性・責任感の両方が高く、高いパフォーマンスを発揮できる「学習ゾーン」が望ましいと話しました。
 心理的安全性を高めるポイントとしては、(1)話しやすさ、(2)助け合い、(3)挑戦、(4)新奇歓迎(新しいものを歓迎し、興味関心を持つ)をあげ、安全性を低める3つの罠(わな)(先入観で物事を決めつける「パターン化」、価値基準の罠、人を動かす際に恐怖や不安を与えて行動を促す「言葉の罠」)についても、例をあげて解説しました。
 その後、指定演題として、外部の心理士による対面のカウンセリングルームを設置(東京)、心理的安全性のある組織をめざしたとりくみ(岡山)、多様性を生かした職場運営(山形)について、報告が。講評にあたった全日本民医連事務局次長の岩須靖弘さんは「今回の看介研にも多職種連携、職員育成、職場づくりのすぐれた実践が報告されているが、その土台にも心理的安全性がしっかりすえられている」と話しました。

(民医連新聞 第1772号 2022年11月21日)