• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • 動画ロゴ
  • TikTokロゴ

民医連新聞

民医連新聞

診察室から シレッと横文字に思いをめぐらせる

 シレッと使われているけれど、実はよくわからない横文字に出会うことが増えてきました。アドボカシーとかレジリエンスとか。それほど一般的なのか? 私が単に勉強不足なのか? 少し恥ずかしいので、調べてみたりします。
 最近出会ったシレッと横文字は「スティグマ」。糖尿病治療ガイドにシレッと載っていました。調べてみると「特定の属性に対して刻まれる偏見」とのこと。例えば、「糖尿病の人は自分に甘いのよね~」などのことのようです。また患者自身が、「私、糖尿病だから…」のように、自分自身を卑下するような感情に陥ってしまうことも含む概念のようです。「スティグマ」をなくしていこう、という趣旨のようです。
 しかしこの「スティグマ」は、結構厄介なものだと思いました。なぜなら、我われ医療従事者が日常的に行う鑑別診断や健康管理などは、この属性を意識しながら思考をめぐらせているからです。
 胸痛を訴える患者を診療した場合に、基礎疾患として糖尿病があれば、心血管疾患を疑う比重が高くなります。糖尿病の定期通院患者の食事・運動・睡眠などの生活習慣については、より細かくチェックをしてしまいます。経験年数があがるにつれ、「糖尿病患者さんらしさ」を脊髄反射のレベル(大脳皮質を経由していないレベル)で捉えてしまっています。
 体格・性別・世代・学歴・所得・居住地域・家族構成などなど、それぞれの属性に対する特徴を捉えて診療を行うことが、質の高い診療につながります。これもシレッと横文字で「コンテクスト」なんて言いますね。
 属性を捉えるとき、一般的にプラスの項目もあれば、当然マイナスの項目も出てきてしまいます。マイナスな項目って、陰性感情と結びつきやすいのですよね。好きって思う感情はそのままで、嫌いって思う感情をコントロールしなさいってことですからね。結構厄介です。そうなると心を安寧に保たねば。今度は「マインドフルネス」について少し調べるかな。(宮田智仁、三重・津生協病院)

(民医連新聞 第1772号 2022年11月21日)