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民医連新聞

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相談室日誌 連載529 不安抱える親子家庭支援 地域連携で生活改善した事例(香川)

 2022年初頭、高次機能病院からリハビリと退院支援目的で転院してきた90代のAさん。離床を拒否し、口癖のように「死にたい。心中するしかない」とくり返していました。妻とは数年前に死別し、長男と2人暮らし。家は物が多く、2人はこたつで寝起きしていたそうです。来院した長男と面談すると、前医の入院費も払えていないこと、父の年金10万円だけで生活し、スーパーで総菜などを買って食べさせていたが、余裕がなく1日2食がやっとだったこと、家賃が払えておらず、父が亡くなれば出て行ってほしいと言われていること、長男自身も中学校卒業後仕事につかず、ずっと家で生活してきたこと、などがわかってきました。自宅の電話機も壊れていて、携帯電話も持っていませんでした。
 自宅の電話は地域包括支援センターの支援で購入しましたが、長男は電話をかけることはできても受けることは難しく、役所での手続きのため地域包括が自宅に伝言のメモを届け、SWが自宅を訪問して同行することもありました。身支度にも一定の手順があり、支度を待つ時間が必要でした。
 入院したAさんの一番の心配は、家に残された長男のこと。「このような状態では1人では生活できそうにない。今後が不安」と夜も眠れないほど鬱々(うつうつ)としていたのです。そこでAさんに、長男にも相談支援員をつけ、仕事の希望があるので就労支援も行っていくこと、生活費については生活保護を申請し、生活の目途が立つことも伝えました。長男の支援を地域包括だけでなく、障害者相談支援センターにも依頼。支援を受けていくなかで時間通りに面談に来られるようになり、自分から支援機関に連絡や訪問もできるようになりました。さらにその後、今後の住まいとしてグループホームの見学も行いました。
 長男への支援がすすみ、Aさん自身も施設入所が決まると、表情は以前よりずっと明るくなりました。入所後に相談員に聞くと、笑顔も出て他の利用者とも交流するようになってきたとのことでした。
 何十年も相談機関につながらず、不安を抱えつつ生きてきた親子への支援を通じ、他機関との緊密な連携、家族支援の重要性に気づかされた事例でした。

(民医連新聞 第1771号 2022年11月7日)

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