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民医連新聞

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〈社保委員長会議の学習講演〉 岸田政権と社会保障改革の強行 ―対抗運動をどうつくるか 佛教大学教授 岡﨑 祐司さん

 10月21日に開催した社保委員長会議で、佛教大学社会福祉学部教授の岡﨑祐司さんが、情勢学習講演を行いました。概要を紹介します。(丸山いぶき記者)

 岸田首相は一見マイルドに見えますが、「しぶとく、聞き流し、軍拡で延命する」、本質的に強権的な政権です。
 敵基地攻撃=先制攻撃を具体化させ、日米軍事同盟の強化で、9条による政治を否定し、大増税、憲法改悪、戦争できる国づくりをすすめています。物価高、円安、賃金低下、生活困難の深刻化に対して、もっとも効果的な消費税減税や最低賃金の引き上げ、中小業者や医療・福祉法人への支援措置などを実行する気はありません。負担増と国民分断、現場の疲弊を招く社会保障改悪を強行し、デジタル監視国家への道をまい進しています。
 政策構成を見ると、経済産業政策と軍事大国化。医療・福祉分野は「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」や「財政制度等審議会(答申、建議)」に示された要求、特に社会保障給付切り下げ・負担増を、「全世代型社会保障改革」の名目ですすめています。

■社会保障改革は集権強化

 総裁選で修正すると公約した新自由主義改革は、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を足がかりに、むしろ加速しています。集権的・統制的な地域医療構想と同様の手法が、今度は外来医療、介護保険でも活用されます。
 都道府県別の医療費を新自由主義的に比較して問題視し、自治体間での削減競争へ。LIFE(科学的介護)に象徴されるように、現場からデータを提出させ、数値化できる成果から型にはめて、DXで現場を統制。診療報酬、介護報酬、補助金で政策誘導し、現場の自治と民主主義は無視。医療・福祉サービスの特性も無視して効率化を求め、労働条件の改善にはつながりません。

■自助強制と生活保障なき改革

 自助=Self-helpは、19世紀・ビクトリア時代の英国資本主義の最盛期に、富裕層にもてはやされた思想です。それが新自由主義改革の推進に都合が良いからと、持ち出され、強制されています。
 社会問題に対する衝撃吸収装置として地域の助け合いを奨励し、誤った「社会保険=共助論」と住民の共助を混在させ、一方で貧困・生活難などの問題解決に関する国家責任を解除するために、共助論が活用されています。そして、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」と、世代間の分断をあおります。国民の生活保障とその国家責任は議論から外されています。
 岸田首相は子ども食堂を視察して、支援を拡充するとのべました。しかし、子どもの貧困は親の貧困であり、本来的アプローチは賃金引き上げと社会保障・福祉政策のはず。それを市民の力に依存して、政府が果たすべき公的役割を担わせる方針です。

■マイナカードと保険証廃止

 マイナンバーカードと健康保険証の一体化に向けて、2024年秋にも医療保険証を廃止する方針は、改悪そのものです。
 DX、マイナカード活用は、新自由主義改革と密接に結びついています。改革推進は、市民の自由ではなく、監視・統制・行動管理・支配と結合します。菅前首相や岸田首相自身が、DXやICT(情報通信技術)に明るいとは思えませんが、なぜ強烈にすすめるのか。支配階級としては、今後、国民や現場、地域への権力的統制・誘導にとって絶対に欠かせない手段だということがわかっているからです。

■これからの社会保障運動

 民医連の手遅れ死亡事例や『歯科酷書』、コロナ禍の現場実態の検証を通じた、専門的視点からの告発がますます重要です。民医連は、実践と運動からなる他にない組織です。労働と運動を理論化して次世代の職員確保へつなげましょう。社会保障はどうあるべきかの対抗構想として社会保障基本法、新しい福祉国家構想を私たちは提起しています。「国民最低限保障」の確立も必要です。
 DXの議論に対しては、市民の手で民主主義と人権の視点から、わがことにする検討が必要です。
 岸田政権は、したたかに、新自由主義改革と軍事大国化をすすめています。運動する我われも、心して対抗していく必要があります。

(民医連新聞 第1771号 2022年11月7日)