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民医連新聞

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副作用モニター情報〈584〉 ボノプラザンによる腹部膨満感・放屁

 ボノプラザン(タケキャブ®)は、2015年に販売が開始された新規胃酸分泌抑制薬(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB))です。従来の胃酸分泌抑制薬のプロトンポンプ阻害薬(PPI)に比べ、酸分泌抑制作用が速く、強力で、かつ効果持続時間が長いことが特徴です。
 今回、ボノプラザンによる腹部膨満感・放屁が報告されたので紹介します。

症例)70代女性
併用薬:アスピリン錠100mg
 ランソプラゾールOD錠15mgが処方されていたが、薬の供給が困難となり、ボノプラザン錠10mgへ変更。処方変更約2カ月後、「薬を変更してからお腹の張りやおなら(放屁)がよく出るようになったので、一旦自己判断で中止した。その後、再開すると同様の症状が出た」と訴えあり。ボノプラザンによる副作用が疑われたため、ボノプラザン→レバミピドへ変更となった。その後はお腹の張りやおならを認めなかった。

* * *

 本症例の腹部膨満感・放屁の発現機序については明確ではありません。しかし、ランソプラゾールからボノプラザンへ変更となり、より胃酸分泌が抑制されたことで消化酵素セクレチンの分泌が低下し、結果として消化吸収がさらに低下した可能性があります。
 なお、一般的に短期間で終了する治療に用いる場合には、ボノプラザンの胃酸分泌抑制作用が強力であることに起因する副作用は臨床上大きな問題にはならないとされています。一方、長期の胃酸分泌抑制治療に用いる場合、PPIの長期投薬で懸念されていた、鉄やカルシウムなどの消化吸収障害、腸管感染症のリスク増加、高ガストリン血症に伴うカルチノイド腫瘍の発生リスクなど、不明点も残っています。特に、本症例のように、消化吸収能が低下した高齢者では強力な胃酸分泌抑制作用が大きく影響し、副作用が発症する可能性があるため注意が必要です。
 長期の使用に関しては、販売開始後20年以上が経過し、ボノプラザンよりも臨床データが豊富なPPIを使用するなど、治療対象疾患に応じた使い分けが必要かもしれません。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1771号 2022年11月7日)

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