気候危機のリアル ~迫り来るいのち、人権の危機~ ⑤世界で広がる再生可能エネルギー 文:気候ネットワーク
現在、有効な気候変動対策として期待されているのが、太陽光や風力、バイオマス、水力といった再生可能エネルギー(以下、再エネ)です。再エネは自然の循環から生まれるため枯渇する心配がなく、CO2を排出しないため、既存の火力発電などからの転換をすすめることが求められます。現在、世界の発電量に占める再エネの割合は28.3%になり(図)、普及に伴って関連産業では、1270万人もの雇用が生まれています。近年日本国内では、原子力発電の再稼働や新増設がすすめられようとしていますが、世界では2022年の上半期、世界的なエネルギー危機でも再エネ電力の比率が前年から12%増加し、原子力や火力は減少傾向にあります。
国際エネルギー機関(IEA)が2050年までにCO2の排出を実質ゼロにするための削減シナリオ(ネットゼロシナリオ)を発表し、2020~2050年にかけて対策技術別の累積排出削減量を試算。太陽光発電、風力発電、電気自動車による削減量がもっとも大きくなると予想されています。このことからも、技術革新に頼るのではなく、現時点で実現可能な省エネ・再エネ技術を最大限導入していくことが、1.5℃目標を達成するためには必須です。日本では再エネのコストが高いことや安定性の確保が課題とされていますが、実際にはコストは年々低下しており、近年は化石燃料を下回るもっとも安い電源として認知されています。日本でも2014年にはすでに、太陽光の自家発電費用は家庭用の電力価格よりも安くなっています。
再エネコストの低下により、積極的に再エネへの転換をすすめる企業も増えています。企業がサプライチェーン(※)全体で使用する電力をすべて再エネに転換することをめざすイニシアティブ「RE100」には、金融、IT、製造業を中心に、世界の名だたる企業384社以上(うち日本企業74社。2022年10月時点)が加盟。今後は関連の中小企業でも再エネ100%への転換が求められます。国内では日本版RE100として中小企業や自治体、団体、教育機関も参加できる再エネ100%宣言RE Actionも始まり、参加団体数も増加しています。
このように、世界では脱炭素の実現のため、そして経済面からも再エネへの転換をすすめていくことが求められています。(豊田陽介)
気候ネットワーク
1998年に設立された環境NGO・NPO。
ホームページ(https://www.kikonet.org)
(民医連新聞 第1771号 2022年11月7日)
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