憲法カフェ ぷち⑫ 戦前回帰な自民党改憲草案②
自民党の改憲草案(2012年)の際立った特徴として、「あるべき家族」像の押しつけがあります。婚姻の自由などを定めた24条の改憲案は、冒頭に「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」と掲げています。
しかし現代社会では、DVや虐待、その他複雑な事情で信頼関係が築けず、むしろ「家族」であることに耐えられず離れて暮らしたい、という人も大勢いて、「家族」の形態はさまざまです。こうした多様な家族のあり方を認めず「助け合え」と命じる憲法は、DVや虐待の被害者の存在を無視し、生活保護の利用や、子どもを保育園へ入れること、認知症の親のケアのために介護サービスを利用することなどを「当然の権利」としては認めません。このような条文は自助・共助を強制し、むしろ福祉の切りすての根拠になるでしょう。また、現在でも育児・介護の担い手は圧倒的に女性ですから、「女性は家事・育児・介護の担い手」という性別役割分業を固定化させる危険性も高いでしょう。
ちなみに旧統一協会の関連団体が考案した改憲案には、これとほぼ同じ条文案があります。性の平等に否定的な思想をもつ者同士、関係が深いのも理解できますね。
(明日の自由を守る若手弁護士の会)
(民医連新聞 第1768号 2022年9月19日)