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民医連新聞

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課題の共有と交流で前進と展望を切り開こう 45期第1回病院長会議

 8月12日、全日本民医連が主催し、第45期第1回病院長会議をオンラインで行いました。各県の病院長、事務長、看護師長などの病院トップと、事務局などを含めた約200人が参加。45期運動方針(以下、運動方針)の確認や、政府の社会保障政策のねらい、医師の働き方改革への対応などを学び、指定報告や分散会で日々のとりくみや問題意識、悩みや希望などを交流しました。(稲原真一記者)

 全日本民医連の病院委員会委員長の山本一視(かずみ)さんが、開会あいさつと病院委員会からの報告を行いました。
 病院委員会の任務として、民医連病院の発展をめざして管理トップをエンパワーメントする、差し迫った課題を明確にして運動・政策に反映させる、の2点を強調しました。今期の重要課題は、(1)診療報酬改定対応、(2)地域医療構想への対応とポジショニング、(3)医師確保と医師の働き方改革対応と説明。アウトカム(成果)は各病院が運動方針を実践し、前向きな発展をすること、経営破綻(はたん)する病院を出さずに医師の確保と養成で成果をあげ、働き方改革への対応を完了することとしました。
 今期の会議は3カ月に1度開催することを確認。病院長、三役が全日本民医連理事会の方針や各専門部の到達を学び、悩みや希望、全国の実践を交流し、現場の声を全日本の方針の資源とすることなどが、活動の柱であると共有しました。
 交流サイトなどの設置や懇親会の開催、今期1度は集合形式で行いたいと提案し、「楽しみながら積極的に参加してほしい」と呼びかけました。

今期最大級の重点課題 方針を学び前進しよう

 全日本民医連の増田剛会長が、「コロナ禍を乗り越えて人権と公正の視点で前進しよう」と題し、運動方針を解説しました。
 コロナ禍で民医連は、「平和、人権、受療権を守る方針で対峙(たいじ)してきた」とふり返り、第1章では、そのなかで何をつかみ取ってきたかをまとめていると説明。オリンピックでの対応や感染対策から見える、国民のいのちを軽視する政府の姿勢、コロナ禍でひろがる格差を指摘しました。
 方針やスローガンに出てくる「公正」と「ケアの倫理」については、「無差別・平等とは、公正な医療と福祉を実現することであり、そのためにはケアの倫理が必要」と解説しました。
 第3章のリード部分に触れ、「困難あるも、未来への萌芽(ほうが)も」として、コロナ禍であらわになった格差の是正、ジェンダー平等や気候正義、課税正義が世界的な潮流になっていることを強調。参議院選挙での民医連の政治要求に、憲法を守ることと合わせて、大切な要素として掲げました。一方で政府は新型コロナ対応に無反省なだけでなく、軍事費倍増を掲げていることを指摘しました。
 「コロナ禍を結束して乗り越え、憲法9条を携え、民医連結成70年の歴史を背負い、地域から人権の波を発進させましょう」と呼びかけました。

政府は社会保障費を敵視 民医連には対抗構想が必要

 全日本民医連事務局次長の林泰則さんが、「社会保障制度改革をめぐる動向―財政審『建議』に焦点を当てて」と題した学習講演を行いました。
 「建議」は「骨太の方針」に先立って、財務省の財政制度等審議会(財政審)が出すもので、政府方針にも大きな影響があります。財政審の構成員は大企業幹部やマスコミ、研究者など新自由主義推進の中心人物が占め、林さんは「社会保障費の抑制が主な議題になっている」と指摘します。
 「建議」では、財政規律の最大の問題が社会保障費の増加と主張し、後期高齢者の医療費2割化などで、受益と負担のアンバランスの解消が必要と訴えています。一方で地域医療構想とかかりつけ医機能の不十分さが、コロナ禍を招いたとして、ひきつづき推進する姿勢を堅持。介護保険制度では、利用料の原則2割化とケアプランの有料化、要介護1・2を地域支援事業へ移行することなどを主張しています。
 規制改革では、オンライン診療の推進と介護現場へのテクノロジー導入による人員削減、さらに消費税増税の議論を再開すべきという、財界の要求を直に反映した内容になっています。
 林さんは「給付は必要に応じて、負担は能力に応じて、というのが社会保障の原則で、財務省の主張は根本的に間違っている」と言います。日本の社会保障支出は、国民1人あたりで見ると先進6カ国中最下位で、平均にするためには52・9兆円が追加で必要とのデータも示し、「社会保障財政そのものを増やす必要がある」と指摘します。「今後、軍事費増大とセットで社会保障費の削減が予想される。民医連はこれに対抗する構想を示す必要がある」と訴えました。

病院トップ先頭に 真の働き方改革を

 医師部からは全日本民医連医師部長の山田秀樹さんが、「2024年に向けた医師の働き方改革の課題」を報告しました。
 医師の働き方改革(別項)の本来の目的は、医師の健康を守り、地域医療の縮小や崩壊をさせないこととしつつ、専攻医からは「民医連外の病院と比較して、処遇の改善が必要ではないか」との声もあると語りました。
 国の真の目的は、病院機能の集約化、過労死基準の2倍の時間外労働の容認、初期研修・新専門医制度による医師の偏在の解消にあることも確認しました。
 山田さんの働く東京・立川相互病院でも、勤怠システムの導入や宿日直の基準の確認などを、厚労省の窓口と相談しながらすすめていることを紹介しました。一部の医療団体からは、宿日直の基準や回数制限を緩和してほしいという、本来の目的に逆行する要望が出され、現場の切実な実態がうかがえます。
 医師の働き方改革は、病院や法人の幹部が、「経営改善と医師の確保と養成」の視点で、医師労働の特殊性や、他の職員とのバランス、賃金体系や手当の見直しなど、総合的に考えるべき課題と指摘。「ぜひ、先頭に立って改革をすすめてほしい」と呼びかけました。

交流を通じて重い共有 活動すすめるエンジンに

 指定報告として、神奈川・汐田総合病院院長の宮澤由美さんと、青森・健生病院院長の伊藤真弘さんが、それぞれ発言しました。
 宮澤さんは3年目の院長として、新施設の建設や増床、地域での立ち位置を考えながら、事業所の出発点である「その人らしく生き生き暮らせることが“健康”」との理念を大切にしていることなど、コロナ禍で奮闘してきた経験を語りました。「ポーランドに行くことが楽しみだったが、ウクライナの戦争でそれもかなわない」としながら、地域の生活の基本でもある平和を守り、戦争に反対する必要性を強調しました。
 伊藤さんは健生病院での、新型コロナ対応の実態を報告しました。感染対策でやむを得ず救急対応や診療規模を縮小。地域に募金をお願いしたところ、胸が熱くなるような感謝の声や、開業医からの寄付がありました。一方で、今後の課題として「感染対策を理由に大切なものを見失っていないか」と、「まず診る、援助する、何とかする、『断らない救急』」を取り戻す決意を語りました。
 指定報告の後には、少人数の分散会で、感想やそれぞれの課題、日々の悩みなどについて交流しました。「立場の近い参加者と遠慮なく話せた」「課題を共有し、良い勉強や刺激になった」などの感想が寄せられました。
 全日本民医連副会長の加賀美理帆さんが閉会あいさつ。平日の半日開催という初めての試みであることや、44期にはほとんど開催できなかったことに触れ、「民医連の医療・介護をすすめるエンジンになる会議。今後も、横のつながりを大切に開催していきたい」と締めくくりました。


医師の働き方改革

 2024年に実施予定の労働規制。年960時間/月100時間未満の時間外労働を認めるA基準、年1860時間/月100時間未満を認めるB・C基準があり、宿日直、当直などの見直しや対応が求められている。一方で2019年の時間外労働の調査では、病院勤務医の4割が過労死基準(年960時間/月80時間)を超え、うち2万人が月160時間を超えている実態がある。

(民医連新聞 第1768号 2022年9月19日)