相談室日誌 連載525 病院だけで解決できない問題 地域連携の大切さを痛感(茨城)
2021年12月、日頃からかかわりのある地域包括支援センターの職員が、Aさんを連れて当院に来院しました。Aさんは60代後半の男性で独居。近隣の住民から「様子がおかしい」と訴えがあり、包括支援センターが介入しました。訪問した職員が、両足に潰瘍を発見。Aさんの所持金はほとんどありませんでしたが、日頃からかかわりがある当院なら相談に乗ってもらえるのではと考え、受診につながりました。本人の話す内容から、こたつによる低温熱傷が疑われました。外科的処置が必要となり、急性期病院に紹介入院しました。
1月、急性期病院から治療の継続・退院調整目的で、当院に転院となりました。Aさんは企業年金を含めて収入が一定額ありましたが、保険料や家賃の滞納や多額の借金があることもわかりました。また、離婚した妻、子どもたちは、Aさんとのかかわりを強く拒否していたため、キーパーソンも不在。Aさんは認知機能の低下もあり、状況を理解しきれず「いいようにしてくれ」とくり返していました。
金銭面の整理、退院先の施設の選定、キーパーソン不在に起因する諸問題など、数々の問題が積み重なっていました。
前医で手続きを開始していた成年後見制度の後見人が決まるまでの間、包括支援センターや市役所の高齢福祉課と相談しながら、短期被保険者証や限度額適用認定証の手続き、介護保険の申請の支援を行いました。後見人は、2人の法律の専門職が担当することとなり、自宅を引き払い、自己破産、生活保護の相談や入所施設の相談などの対応をしてもらい、無事に施設入所となり退院しました。
日頃からのかかわりのなかで包括支援センターから信頼してもらえていると感じ、うれしさを感じる一方で、病院だけでは解決できない問題も多々あり、あらためて、公的機関を含めてさまざまな機関との連携の大切さを感じました。
今回は、成年後見制度の利用となりましたが、弁護士など専門職にかかわってもらう必要があるケースも多く、ソーシャルワーカーが専門職と相談しやすい環境をつくっていく必要もあると思いました。
(民医連新聞 第1767号 2022年9月5日)